プロジェクト像のラフスケッチ「リーンキャンバス 」——無駄なく試行錯誤する、ノンスタのWebアプリ開発フロー 第一回 

こんにちは。エンジニアの川島です。(おひさしぶりです!笑)
いつの間にやら冬も終わり、暖かくなってきましたね。昼休みに心置きなく散歩できるので嬉しい限りです。

さて、私たちノンスタはWebサイトだけではなく、Webアプリケーションの制作にも注力しています。
私たちの生活に密接な関わりを持つWebアプリですが、その身近さに反して、発注された後どのように制作が進むのか、Webサイト以上にイメージしづらいものでもあるかもしれません。

※【WebサイトとWebアプリの違い】
情報提供が主な目的であるWebサイトに対し、Webアプリケーション(Webシステム)はユーザーの操作によって様々な目的を実現します。
ブラウザ上で利用できるため、別途インストールする必要がないことも特徴です。ネットバンキングやオンラインショップなど、様々なWebアプリが私たちの身近に存在しています。
その中でも、ノンスタは業務を効率化するWebアプリの制作に特化しています。

そこで新たな特集として、ノンスタにおけるWebアプリ開発の流れを、これから一つずつ紹介してゆきたいと思います。
ノンスタへの依頼を考えている方、あるいは既に依頼してくださった方に、「こんなことを考えて制作ステップを進めているのか」と参考にしていただけたら、とても嬉しいです:)

私たちの開発手法——パートナー協働型のリーン&アジャイル開発

特集第一回の導入に変えて、具体的な手法の紹介に入る前に、「何故そうしているのか」をお伝えします。

人々の趣味嗜好が多様化した現在、「ユーザーが求めるもの」の予測はますます難しくなっています。
綿密な計画に基づき、長期の開発期間を経て、仕様どおり完璧なWebアプリをリリースしたとしても、ユーザーの需要に合っていなかった(が、予算を使い切ってしまったため、もう方向転換もできない!)——そんな失敗は避けたいところです。

そのため、私たちは「最初から完璧な完成品を作るのではなく、小さな機能を継続的に開発し、ユーザーが求める形に近づけてゆく」手法を採用しています。
ユーザーのフィードバックに基づいて開発・改善を繰り返すため、需要に合わない機能を作り込んでしまうリスクが低く、コストを抑えながらも素早くWebアプリを制作できます。

そして、「完成品を一度作って終わり」ではなく、「フィードバックを得ながら改善を続けてゆく」手法である以上、私たちだけで開発を完結させることはできません。
クライアント様のパートナーとして、プロジェクトの始まりである仮説・課題の検証から、リリース後の分析・改善まで、共に考え、共に良いものができるよう磨きこんでゆく。
それが、私たちの開発手法です。

私たちのプロジェクトの進め方は、「リーン」という経営手法と、「アジャイル」という開発手法を組み合わせたものです。
リーンおよびアジャイルについてもっと知りたいという方は、下記の記事が参考になります。

ノンスタのWebサイト上でも詳細を解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。
Webアプリケーション開発の流れ|東京のWeb制作会社|non-standard world株式会社
https://www.non-standardworld.co.jp/service/webappflow/

それではさっそく、上記を実現するために行なっている具体的な手法について、現在ノンスタで開発中のWebアプリを例に挙げながら、ご紹介してゆきたいと思います。
特集の第一回、本記事で紹介するのは、プロジェクト全体のラフスケッチ「リーンキャンバス」です。

リーンキャンバスとは?

リーンキャンバスとは、プロジェクトの企画段階において全体を俯瞰し、無駄なく仮説を立てる手法です。
プロジェクトにとって重要な9要素が一枚の図にまとまっており、各要素を埋めてゆくことで、シンプルに、すばやく仮説を磨きこむことができます。

コラム:リーンキャンバスの歴史
リーン(Lean)には「無駄のない、引き締まった」という意味があります。リーンキャンバスはもともと、アッシュ・マウリャの著書『Running Lean』で提唱された手法です。
具体的な歴史背景、およびリーンキャンバスの詳細については、下記の記事が参考になります。

リーンキャンバスを活用するメリット

リーンキャンバスは一度作って終わりではありません。何十ページもあるような事業計画書とは異なり、簡単に作成できるからこそ、何度も繰り返しブラッシュアップし、仮説の精度を高めることができます。
また、プロジェクトの全体像を一枚図で網羅しているため、チームメンバーへの共有も容易です。「このプロジェクトは、誰にとっての課題を、どのような手段で解決するためのものなのか」——それが一目で分かり、チームの共通認識として機能するということは、プロジェクトを進めてゆく上で大きなメリットとなります。

リーンキャンバスを構成する九要素

リーンキャンバスを構成するのは、以下の九要素です。番号順に埋めてゆくことが推奨されています。
各項目の詳細については、後ほど実際のリーンキャンバスを例に挙げながらご紹介します。

  1. 課題
  2. 顧客セグメント
  3. 独自の価値提案
  4. ソリューション
  5. チャネル
  6. 収益の流れ
  7. コスト構造
  8. 主要指標
  9. 圧倒的な優位性

リーンキャンバス作成のポイント

リーンキャンバスの作成にあたって、押さえておきたいポイントがあります。
重要な要素は最初のふたつ、「課題」と「顧客セグメント」だということです。これらを最初に埋めると、残りの要素の方向性も決まり、ぐっと考えやすくなります。
そして、アイデアの初期段階では、埋められない要素があっても良いということも覚えておいてください。
リーンキャンバスは、仮説を検証しながら、何度も書き直してゆくものです。課題や顧客セグメントの仮説を修正すれば、おのずと他要素も影響を受けるため、初めからすべてを綿密に決める必要はありません。できるだけ簡潔に、すばやく埋めてゆきましょう。

リーンキャンバスの作成例:therapist days

それでは、実際のリーンキャンバスを例に挙げて、各項目の記入例をご紹介しましょう。
今回リーンキャンバスに落としこむプロジェクトは、代表高崎による「セラピストが抱える事務的課題をITでサポートする」というアイデア。プロジェクト名称は「therapist days」です。(※弊社の代表はSexy Zoneの大ファンで、イチオシのCD「イノセントデイズ」が机に飾ってあります笑)

作成にあたっては、「暮らしのいろいろ ていねいに、」オーナーの福田さんと、スウェディッシュマッサージセラピストの山辺まきさんにヒアリングのご協力をいただきました。ありがとうございました!

1. 課題:どんなことに困っているだろう

まずは、想定する顧客(サービスにお金を支払ってくれる可能性がある人)が解決したがっている課題の仮説を立ててみます。
アイデアによっては、需要・供給の両サイドに顧客がいなければ成り立たないものもあります。(例えばオークションアプリなど。買い手・売り手双方にとって価値がなければ、いずれ失敗してしまいます)
該当する場合は、リーンキャンバスの段階で、両サイドの立場から仮説を考えてみましょう。

ここでは、想定される課題を三つほどリストアップしてみました。

  • ポータルサイト経由の集客はリピーターを作りにくく、予約管理もしづらい。仲介手数料で利益率が圧迫される。
  • サロンのWebサイトで集客したいが、自身で作るのは難しい。
  • 既存のWebサイト作成ツールはデザインがいまいちで、ブランディングにこだわれない。

2. 顧客セグメント:どんな人が使ってくれるだろう

続いて、顧客に成り得るのはどのような人かを考えます。
詳細であるほど、具体的な仮説を考えやすくなるため、属性だけでなく行動まで考えると良いでしょう。

事務的負担は小さなサロンの方が重そうなので、下記のように書き出してみます。

  • 小さなサロン(自宅サロン含む)を持ち、個人でセラピストとして開業している人

3. 独自の価値提案:自分たちだからこそ提案できる価値を考える

課題と顧客セグメントが固まったら、価値提案について考えます。
ここは、仮説の検証を重ねる中で、課題と顧客セグメントに変更があれば、合わせて変わってゆく部分です。最初から完璧に書く必要はありません。

ノンスタは論理と感性に基づくデザインが得意分野。また、業務効率化を叶えるWebアプリの開発に特化しています。これらの強みを踏まえて、自分たちだからこそ実現できる価値を書いてみます。

  • サロンに最適化されたデザインのWebサイトが簡単に作れる
  • SNSやnoteと連携して、サロンの顧客(見込み顧客含む)と関係性を築ける
  • 手動で行っている事務作業(予約管理、顧客情報管理、売上管理の自動化)の効率化

「仮説」「顧客セグメント」「独自の価値提案」。
ここまでの三つが埋まったら、実際に実現するための具体的な仮説を立ててゆきます。

4. ソリューション:具体的な解決策

課題を具体的に解決できる施策を考えます。
こちらも課題の検証次第で変わり得る項目のため、現段階では詳細を詰める必要はありません。

  • サロンに適したデザインのWebサイトを作成し、予約・カルテ・問い合わせまで一元管理できるWebアプリ

5. チャネル:どうやって顧客と繋がるか

どんなソリューションも、それを使う顧客に知ってもらわなければ意味がないもの。
どのような経路で顧客と繋がるかを検討します。

  • Web
  • リアルのサロン

6. 収益の流れ:何によって収益を上げるか

ビジネスとして成り立たせるための収益モデルを考えます。

  • 月額定額使用料

7. コスト構造:継続させるために必要な費用は何か

ビジネスとして運用するために、何のコストがどれほど掛かるかを洗い出してみます。

  • 人件費
  • サーバー代
  • 広告費用

8. 主要指標:何をもって成功と判断するか

ビジネスを軌道に乗せるまで、計測するべき定量的な指標を考えます。

  • 月の売上(MMR)
  • 解約率

9. 圧倒的な優位性:競合他社が容易に真似できない強みがあるか

競合と比較した際に、何をもって優位性を確保できるのか考えます。

  • 美しく使いやすいデザイン、UI
  • 様々なデバイスへの対応
  • 迅速な処理速度

最初の仮説(Plan A)完成! そして、継続的なバージョンアップへ

以上の九要素で、リーンキャンバスがすべて埋まりました!
とはいえ、これは一番最初の仮説。前述したとおり、リーンキャンバスを活用するなら、ここからが本番です。
プロジェクトの共通言語としてチームに共有したり、メンバーの意見を取り入れて内容をブラッシュアップしたり、ヒアリングやインタビューによってそもそもの課題を見直したり……。Plan AからPlan B、そしてPlan Cへと、バージョンアップを重ねながら、プロジェクトのアイデアを磨きこんでゆくことになります。

おわりに

本記事では、ノンスタのWebアプリ開発フローにおける最初のステップ、リーンキャンバスについてご紹介しました。

とはいえ、後はリーンキャンバスをブラッシュアップすれば、すぐにも開発に取りかかれる……という訳ではありません。リーンキャンバスはあくまでも作り手の仮説。独りよがりにならないように、実際にアプリを使うユーザーのことを深く知る必要があります。

次回は、想定ユーザーを深掘りする「ペルソナ・カスタマージャーニー」の手法について解説します:)