独学の壁のその先へ。フルスタックエンジニア太田直毅氏に訊く、30年の道のり——技術顧問就任対談:前編

こんにちは。エンジニアの川島です。
先週公開したこちらの記事でもご案内したとおり、2019年7月より、私たちノンスタの技術顧問として、株式会社OTAシステム開発のCEOである太田直毅さんが就任されました。

このたびの技術顧問就任を機に、太田さんをお招きし、弊社代表の高崎と一対一で対談を行っていただきました。その対談の様子を、前後編に分けて皆さまにもお届けします。

太田さんは、データベースからWebアプリまで、幅広い領域を30年に渡って活躍してきたフルスタックエンジニアであり、経営者でもあります。
そんな太田さんと高崎は、もともと旧知の間柄でした。
30年前のWeb黎明期、互いの出会いと現在の取り組み、そして今後の展望まで、二人の会話は過去から未来へと広がってゆきます。どうぞゆるりとお付き合いください:)

本日のゲスト:株式会社OTAシステム開発 
代表取締役/エンジニア 太田直毅氏

1969年、仙台生まれ。大学卒業後に米国系の通信会社に就職し、日本初の商用インターネットサービス立ち上げにプログラマとして参加。
1998年に独立し、WEBアプリケーションの開発を中心に活動。2017年に法人化し、株式会社OTAシステム開発を設立。趣味は家族キャンプ。


Webの歴史とともに。

高崎(代表)

今日はよろしくお願いします。まずは、僕らの出会いのところから話しましょうか。
もともとは、太田さんがエンジニアとして僕の前職のオフィスに来ていた、という縁があったんですよね。それで、ちょうど席が隣同士だった。

そのときの僕はWebを作る側の人間じゃなかったんですけど、仕事で関わりあう中で色んなことを教えていただいた、というのが一番最初のきっかけでした。
そこから、僕が独立して、ノンスタという会社を立ち上げたあとも、今までずっと縁が続いています。

それじゃあ、太田さん、キャリアの始まりから現在までの経歴をお願いできますか。

太田さん

はい。僕は新卒で外資系の通信会社に入りました。
そこは日本初のインターネットサービスプロバイダ業も手がけていたんですが、僕がやっていたのは主に銀行システムのソフトウェア開発です。

大学時代はデータベースの設計を学んでいました。あの頃に学んだことは、今でも自分の基礎になっていますね。時代とともに技術は進化して変わってきましたけど、根っこの部分、原理原則の考え方はそんなに変わっていないと思います。

入社されたのは何年ごろですか?
1992年です。
ああ、ちょうどWWW(ワールド・ワイド・ウェブ)が発明された頃ですね。
コラム:Webの歴史マメ知識
今では私たちの生活に欠かせないWebの歴史は、およそ30年前に始まります。
Webはティム・バーナーズ=リーらによって1990年に実装され、1991年にはインターネット上で利用が可能になりました。日本初のホームページが公開されたのは1992年のことです。
そうですね。あの頃はまだ、ブラウザもMosaicっていう一種類しかなくて、HTMLの日本語資料もなくて……。それでも、Webはすごく衝撃的でしたし、パソコンがこれから広く普及していくかもしれないとか、わくわくした空気がありました。楽しかったですね。
その時代にキャリアが始まったことは、太田さんになにか影響を与えていますか?
タイミングはすごく良かったです。Webにまつわるいろんなものが生まれる原点を経験できたので。いまの世の中にすっかり普及しているWebが、どういう経緯で形作られていったのかよくわかる時代にキャリアが始まったなと思います。
なるほど。最初に手がけたのはデータベースや銀行のシステム開発だったけれども、生まれたばかりのWebが発展してゆく流れにも惹かれた、という感じでしょうか。
そのあと独立されたんですよね。
ええ、その会社には五年くらい勤めて、1998年に独立しました。
何かきっかけになった出来事ってあるんでしょうか。
きっかけは……その会社が、プロバイダ業に専念するって方針になったんですね。そちらの仕事も面白そうではあったんですが、やっぱり開発をしたかった。
それと、システム開発だけでなく、Webアプリケーション開発に取り組んでみたかったというのもあります。

当時、CGIというWebアプリケーションの原型のようなものでデータベースのインターフェースを作るという取り組みがアメリカで始まって、すごく面白いと思っていたんです。ただ、日本ではそういうことをしている会社がまだなかった。

コラム:Webの歴史マメ知識
システム開発とWebアプリケーション開発には、重なり合う部分もありますが、主にWebブラウザ上で動作するものがWebアプリケーションと呼ばれます。

そして1998年といえば、Internet Explorerのシェアが一気に広がっていった時代です。それまでのブラウザは有料であったり、別途インストールが必要だったりと、Webを利用するにも少々ハードルがありました。IEがWindows98に標準搭載されたことによって、Webは誰でも簡単にアクセスできるものになってゆきます。iMac初代の発売も、Google社が設立されたのも1998年です。

そこで、自分のいた会社に、アプリケーション開発周りの仕事を自分にやらせてほしいと相談して、独立することにしたんです。
そうだったんですね。
Webアプリケーションって、ユーザーさんにとっての居場所みたいなところがあったり、ちょっとした表現——ボタンの配置や文言の有無で、ユーザーさんの反応が変わったりするのが面白いですよね。
データの設計・管理・運用が主になるデータベース周りの仕事に比べて、人間とコンピューターの間に立って仕事をするような感じがします。
ええ。いま高崎さんがおっしゃったように、僕はひととコンピューターの間のインターフェースにいちばん興味がありました。

やっぱり、システムを作るときって、ひとの問題を解決するために作るというのがベースにあると思うんです。業務の中でいろんな課題があると思うんですが、その困難を抱えているのは結局ひとであろうと。
その、ひとの課題を解決するために何かを作る、という方に魅力を感じていたんです。

なるほど。そうして独立されて、ずっと開発の仕事を続けてきたんですね。
システムの裏側にあたる部分から、インターフェース……ひとが実際に触れる表側の部分まで、おひとりで、フルスタックエンジニアとして何十年も。
ちなみに、プログラミング歴は……?
プログラミング歴でいうと30年くらいです。ほんとにコードを書くのは好きなので、これからスピードが衰えるということもないかなと思います。

人に何かを教えるということ。

じつは、太田さんには以前から、技術顧問になってくれないかとお声がけしていたんですよね。長年、いろいろ相談にも乗っていただいて。
いつも丁寧に、穏やかに、図解まで添えて答えてくれるって、誰にでもできることじゃないですよ。僕らもそうならなきゃなって思うんですけど、ほんとうにすごい……。
(照れながら)いやいや……ありがとうございます。
それも、ただ答えを示すのではなく、質問を受け止めた上で、僕らが自分で解決できるように手助けするというスタンスで……。太田さんに技術顧問をお願いした理由は、その教える姿勢に惹かれて、というのがまずひとつあります。

僕らは独学でやってきた人間ばかりで。二十代後半で独立して、そのときどきで求められる技術を学びながら、短い納期や急なトラブルを瞬発力でなんとかする……という方法で今までは生き延びてきました。

でも、やっとその段階が一息ついて、落ち着いてあたりを見回せるようになってきた。改めてここでWebやプログラミングの仕組みを体系的に学び、メンバーの基礎の底上げをしたいんです。
太田さんには技術力も長年の経験もあって、その上で教え方もすばらしいですから、ぜひ技術顧問をお願いしたかった。

その、今回こうしてオファーを受けてくださったのは、太田さんのキャリアの中でも、なにかビジョンに変化があったんですか?

そうですね。最初にお話をいただいたときは、自分の中に技術顧問というイメージがまだできていなかったんです。どのようなアドバイスをしたら期待に応えられるのか、もっと明確に考えようと思いました。

それから何年か、高崎さんとの交流を通して、だんだんそのイメージが固まってきて。
これまで先輩から教わってきたことをベースに、学んできたことを自分の言葉で話す——そういう形ならできるかな、と。

それに、今年、50歳になって、そろそろ周りから期待されることが変わってきたというのもあります。

ああ、マネジメントとか。
そうです。これまでのいろんな経験、僕が経験してきたことが、誰かの役に立つんだと感じられる機会がすこしずつ増えてきたというのも、お話を受けた理由ですね。
自分の経験に価値があるのであれば喜んで共有したいですし、そういう活動をこれからやっていきたいなと思っています。

太田さんの現在の取り組み。

太田さんは現在、システム開発や技術顧問の仕事に加え、AIを活用したアプリの開発も手がけています。
この日、太田さんが開発中の英会話アプリを見せていただく機会がありました。

音声認識を備えており、スマホに向かって英語で話しかけると、場面が次に進みます。

機内食を注文するシーン。あなたならどう答えますか?

こちらのアプリの面白いところは、正解がひとつではないこと。「Chicken, please.」でも、「May I have a fish meal?」でも、文脈に沿った受け答えであれば、AIによって正解と判定される仕組みです。実際の会話に近い臨場感があり、面白いですね:)

後編につづく!

対談の途中ですが、続きは来週公開予定の後編にてお届けします。
二人の話はさらに盛り上がり、互いの業務上の悩み相談から、これから目指すものの話へと広がってゆきます。どうぞ最後までお付き合いくださいませ。