日本一穏やかな会社を目指して。あたたかく、成果も出すチームのつくり方
この度、non-standard world の CCO(Chief Culture Officer)に就任させていただくことになりました小栗と申します。
Chief Culture Officer とは、社内カルチャーをつくる責任者です。
私たちの会社は
- 在宅勤務を導入している
- 今秋から新しく社員が増えた
- ありがたいことに多くのご依頼をいただき業務が忙しくなっている
これらの理由から、「日本一穏やかな会社を目指す」というビジョンのもと、働きやすい雰囲気づくりのため CCO を設立することとなりました。
とはいっても、私自身この役職を知ったのはつい最近のこと。
代表のけんじさんから、「CCOとして就任してほしい」と言っていただけたときは、「C○O ってすごいやつだ…」という印象でした(笑)
そんな私に課題本として渡されたのがこちらの本。
穏やかな会社なのに最強チーム…?? と思いつつ読み進めると、「最強」のイメージとは異なる「あたたかく、かつ結果も出すチーム像」が見えてきました。
帯の言葉をお借りすると、安心して、相互に助け合い、成長し続けるチームのつくり方。
この記事では、本書の要旨をご紹介していきます。
成功しているチームの共通点は?
成功しているチームをつくるにはどうすればいいのでしょうか。
どれだけ能力の高い人が集まっても、職場の雰囲気がギスギスしていたり、仕事の意義が感じられなければ、力を十分に発揮することは難しくなります。
でも、「チームのためにがんばりたい」と一人ひとりのモチベーションが高まれば、チームの力は何倍にもなる。
そのためには、「安全な環境をつくる」「弱さを見せる」「共通の目標を持つ」の3つが大事だと本書は伝えてくれています。
1.安全な環境をつくる
安心できる環境で、人はより高い成果を出せると言います。
しかし、現実は「こんなこと言って大丈夫かな?」という不安や、チーム内での孤独感を抱えることもあるのではないでしょうか。
実は、これらは人間の本能によるもの。
脳の扁桃体は危険がないかを常に監視していて、危険を察知するとストレスホルモンが体内を駆け巡り、「戦うか、それとも逃げるか」モードに入るそう。これがチームの不和を生み出します。
でも、最近の研究では、扁桃体は帰属意識を感じると、社会的な絆を確立・維持するために力を発揮することが分かっています。
では、帰属意識を生むためにはどうすればいいのでしょうか?
こんな実験が紹介されていました。
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部屋で一人、難しいパズルに取り組むよう要求されます。
2分後、あるメモを渡されます。
内容は、「同じパズルをしているスティーブが、あなたにコツを教えたい」というもの。
すると、脳内のある部位が活発になり、モチベーションは高まり、パズルに取り組む時間が50%長くなる結果に。
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メモには、パズルに関する情報は一切書かれていません。
それでも、「自分のことを気にかけてくれる人がいる」というメッセージを受け取るだけで、これだけの違いが生まれます。
「ここは安全な場所だ。私たちはつながっている」というメッセージを一貫して伝え続けることが、チームへの帰属意識を高めるのです。
2.弱さを見せる
問題に直面したとき、成功しているチームは、お互いを信頼して自然と協力体制が敷かれます。
では、信頼関係を築くにはどうすればいいのか。
本書は、信頼関係が深いチームの共通点を、弱さを見せる瞬間があることだと言います。
誰かが弱みや欠点を話してくれたとき、一気に親近感が湧いたり、なんとかしなければとモチベーションが上がる経験をしたことはないでしょうか?
本書で紹介されている実験でも、冷たい聴衆の前でスピーチした人は、他人への協力度が50%も上昇したそう。
また、作業の完成間近でソフトウェアがクラッシュするよう仕掛けられた実験例もあります。
誰かに助けてもらえた参加者は、助けてくれた当人だけでなく他の人にも協力的になりました。
自分一人ではできないと感じたとき、人は他者を信頼しようとする。
信頼しているから弱さを見せられるのではなく、弱さを見せるから信頼が生まれる。
ここで気をつけたいのが、弱さが共有されたときの受け取り方です。同じように自分も弱さを開示するのか、それとも隠そうとするのかで、結果は大きく変わってきます。
互いに「自分には弱点があり、助けが必要だ」というメッセージを共有していくことで、チームワークが強固になっていきます。
3.共通の目標を持つ
成功しているチームは、徹底的に共通の目標を明確化しています。
現在の状況と理想の未来を結ぶ物語を、繰り返し共有する。それによって、メンバーは目標に向かって行動することができます。
面白い事例が紹介されていました。
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あるコールセンターは大学の寄付金を募る仕事をしていましたが、なかなか職員のパフォーマンスが向上しません。
そこで、寄付金を奨学金として受け取った学生を招待し、「自分はどんな人間か」「奨学金のおかげでどんな学生生活を送っているか」を話してもらいました。
すると、職員が電話をかける時間は142%増加し、収入は172%増加。
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仕事の内容も給料も変わっていないのに、「働く意味」は職員に大きな変化をもたらしました。
このように、現在の仕事と目指す未来のつながりを感じられると、メンバーのモチベーションは上がっていくのです。
“強いチームのエンジンに火をつけるのは、いたって常識的な普通の人”
この本を読んで私が一番感動したのは、当時世界のイノベーションの中心地だったベル研究所の事例です。
飛び抜けて結果を出していた研究者の共通点は、意外なものでした。
それは、物静かなエンジニアのハリー・ナイキストとランチを食べていたということ。
個性的でエキセントリックな天才科学者が多く集まるなか、彼はあまりにも普通の存在でした。物腰の柔らかい、勤勉な常識人。
ただ、周りの人を気にかけ安心させる人柄の温かさや、好奇心が強く質問好き。彼の存在が、周りの人のやる気を高めたり、ひらめきのきっかけになっていたそうです。
本書では数多くの成功しているチームが取り上げられていましたが、チームの力を高めていたのは、高度なスキルや強いリーダーシップではなく、ちょっとしたさりげない、でも地道な「あなたを気にかけている」というメッセージでした。
感謝を伝えること
相手の話をさえぎらず熱心に聞くこと
全員が発言できているか気を配ること
きっと誰にでも、「このままの働き方でいいのかな」「この仕事に意味はあるのかな」と悩む瞬間はあると思います。
そんなときに「頑張ってよかった」「一生懸命やってよかった」と感じられるような会社のカルチャーをつくっていけたらと願っています。