
デザイナー視点でみる「Googleトラベル」のUX、20のすぐれたポイント
こんにちは。アートディレクターの佐藤です。
先日、Googleの旅行プランニングツール「Googleトラベル」のPC版がリリースされました。個人的に旅行の計画を立てていたので使ってみたところ、こういうの欲しかった!と思える秀逸なサービスでした。
新しくなったGoogleトラベル(PC版)で旅行の計画立ててるんだけど正直便利すぎる。
リアルタイムに情報更新されるガイドブックに、予約ボタンが付いた感じ。
行き先を迷ってる段階でも、世界地図見ながらフライトの料金比較できるので、色んな所に行きたくなる秀逸なUX。https://t.co/4bpPQrs5rN pic.twitter.com/r9laYJp4t8
— 佐藤昭太 / non-standard world (@shotasato_nsw) 2019年6月5日
Googleトラベルは、フライト/ホテル/観光スポット/レストランのリサーチから予約までできるサービスです(*予約は対応している施設のみ)。
そこで今日は、このサービスの提供するすぐれたUX(ユーザー体験)のポイントを、デザイナーの視点で整理してみます。
目次
旅行者の行動シナリオに沿ったコンテンツと導線
みなさんは旅行に行くとき、どういった行動のプロセスを辿るでしょうか。
UXのポイントを整理するにあたり、旅行者の行動を以下の4つの段階に分けて、サービスを見ていきます。
すると、Googleトラベルには旅行者の行動シナリオに沿ったコンテンツと導線が用意されていることがわかりました。ひとつずつ見ていきましょう。
1)旅行に行こうと思い立った段階
この段階では、以下の3つの状態が考えられます。
- 日程が先に決まっている状態
- 行き先が先に決まっている状態
- 日程も行き先も決まっていない(漠然と旅行に行きたいと思っている)状態
Googleトラベルでは、どの状態からでも検討を始められます。
日程が先に決まっている状態
まとまった休みの予定があって「旅行に行こう」と思い立つなど、日程が先に決まっていて、次に行き先を検討するパターンです。
この場合、Googleトラベルでは日程を入力することで、地図上に各都市までのフライトの料金がプロットされ、俯瞰して候補の行き先を探すことができます。

▲日程を入力すると地図上にフライトの料金が表示される
地図を拡大するとより詳細な目的地候補を表示。直行便の絞り込みや、出発/到着の時間帯指定などのニーズにも対応しています。料金の表示をクリックすると航空会社ごとの料金一覧表が表示される形です。

▲地図拡大でより詳細な目的地候補を表示
すぐれたUXデザインのポイント
- 「行き先を決めていない状態」で候補地を探すことができる
- 地図上にフライトの料金がプロットされる直感的な画面で、何気なく地図を眺めながら行き先を探せる
- 料金をクリックすると航空会社ごとの料金一覧表が表示され、全体から細部へという直感的な導線でリサーチできる
行き先が先に決まっている状態
例えば旅先を紹介した雑誌やSNSなどがきっかけで「ここに行ってみたい!」と行き先が先に決まっているパターン。
行き先ありきで次に「いつ行くか」を検討します。
この場合、「料金グラフ」で任意の泊数での料金の「推移」を一覧表示することができます。つまり、安く行ける日程を探すことができるわけです。

▲「料金グラフ」 では料金の推移を表示(お盆がいかに高いかわかりますね。。)
さらに、「日程」では最安となる往路・復路の日程の組み合わせを調べることもできます。

▲「日程」 では最安となる日程の組み合わせをグリッドで表示
すぐれたUXデザインのポイント
- 「行き先は決まっているが、日程を決めていない状態」で日程を絞り込むことができる
- 安く行ける時期を、直感的な料金グラフで探せる
- 大まかに時期を選んだ後さらに詳しく、最安となる往路・復路の日程の組み合わせを表から探せる
日程も行き先も決まっていない(漠然と旅行に行きたいと思っている)状態
いつ行くかも、どこへ行くかも決まっていないけれど旅行したいと思っている状態。その場合は、トップ画面で表示された「人気の目的地」から検討を始めることができます。

▲Googleトラベルのトップ画面「人気の目的地」
「人気の目的地」は、ユーザーが現在いる場所によって内容を変えているようです。US版だと下記です。

▲Googleトラベルのトップ画面「人気の目的地」(US版)
なお、US版には「パッケージ」という画面があります。出発地を入力すると、人気の旅行先について、フライトとホテルのパッケージで提案される形。よりリコメンデーションの色が強くなっています。

▲GoogleトラベルUS版の「パッケージ」
すぐれたUXデザインのポイント
- 「日程も行き先も決まっていない状態」で検討を始めることができる
- ユーザーが今いる場所で人気の旅行先が表示されるので、リコメンドされた情報から「選んで決める」ことができる
2)計画を立てる段階
日程と目的地を絞り込んでいく段階です。
数日かけて検討を進める中でサイトを再訪すると、トップ画面には「チェック中の料金」として最近検索したフライトの情報が表示され、リサーチを続けることができます。

▲過去にフライトを検索したユーザーに対して表示されるトップ画面
検討中のフライトやホテルについて、料金が更新されたらメール通知を受け取ることや、同行者に共有リンクを送って相談をすることもできます。
すぐれたUXデザインのポイント
- 前回調べた条件から、引き続いてリサーチを続けることができる
- 料金が更新されたらメール通知を受け取れる
- 同行者に共有リンクを送って相談や確認ができる
3)予約する段階
いよいよ予約です。従来、フライトやホテルの予約を行うには、それぞれのサイトで都度、旅程を入力する必要がありました。
ところがGoogleトラベルでは、Googleトラベルを起点にすることで旅程を都度入力することなく予約を行うことができます。

▲フライト詳細画面からサプライヤーのサイトへ遷移して予約を行う
さらに、一部の地域で提供開始されている機能 「Book on Google」・「Reserve with Google」 では外部のサイトへ離脱もすることなく、Google上でホテルやレストランの予約・決済まで完結するようになっており、より画面遷移回数の少ないスムーズな予約が可能です。
旅程表の自動生成
フライトやホテルの予約確認メールをGmailアドレスで受信するようにすれば、自動的に旅程表が作られます。今後の旅行は、Googleトラベルのトップ画面に表示されるようになっています(事前承諾なしの自動生成というのが議論のありそうなところではありますが)。

▲今後の旅行を表示。クリックすると旅程表へ

▲旅程表のページ
旅程表が自動で作られることにより、ユーザーがこの画面を再訪することが期待できます。そして旅程表を起点に、宿泊するホテル周辺のレストランの検索・予約や、観光スポットの検索・予約なども可能になっています。

▲宿泊するホテル周辺のレストラン検索・予約

▲観光スポットのチケット購入

▲観光スポットのチケット購入(決済までGoogleトラベル上で完結)
すぐれたUXデザインのポイント
- フライト、ホテルなどの予約ごとに都度旅程を入力しなくて済む
- (対応している地域・施設では) 決済までサイト上で完結する
- 予約を行うと、旅程表が自動で作成される
- その旅程表を起点に、観光スポットやレストランの検索と予約ができる
- "宿泊するホテル周辺のレストラン" といった絞り込みができる
4)実際に旅行をする段階
旅行先ではスマホからのアクセスが主になるでしょう。フライトの運航情報やゲートの確認、ホテルの地図表示などが、すべて旅程表を起点に行えます。もちろん、現地で観光スポットやレストランの予約も可能です。
すぐれたUXデザインのポイント
- 自動生成された旅程表をスマホで見ながら旅行ができる
- 旅程表では、フライトの運航情報など旅行中に必要な情報をリアルタイムに確認できる
- 旅程表を起点に、観光スポットやレストランの検索と予約ができる
- 観光スポットやレストランの混雑情報をリアルタイムに確認できる
GoogleトラベルのUX、惜しい点
非常にすぐれたGoogleトラベルのUXですが、惜しいと感じたポイントも書いておきたいと思います。
PC版とスマホ版のよりシームレスな連携
McKinseyの調査 において「Travel shoppers are hopping between devices」にも書かれているように、「計画を立てる段階」においてユーザーの多くはPCとスマホの両方から複数回アクセスすることが考えられます。たしかに一度にすべての予約までの決断ができることは稀なので、何度かサイトを訪問するはず。そんな時、PC版で検索した履歴が、スマホ版でも反映されていれば、よりスムーズに予約までたどり着きそうです。
「やること」から目的地を探す導線
「旅行に行こうと思い立った段階」で、実はもう一つ想定できる状態がありそうです。それは「やりたいこと」が先に決まっている状態。
例えば、ピカソの作品がある美術館に行きたい、有名なスポットでサーフィンがしたいなど、やることを起点に目的地を探したいというニーズです。しかし、やることを起点に世界中の都市から候補地を探すという導線は見つけられませんでした。
通常のGoogle検索を活用すればそれに近い検索ができますが、Googleトラベル上にそうした導線があると、利用するユーザーは一定数いると考えられます。
まとめ
これまで見てきたように、GoogleトラベルにはすぐれたUXデザインのポイントが数多くあります。
旅行者の行動を考慮したコンテンツと導線が用意されており、計画段階から旅行中まで一気通貫して利用でき、旅行者の体験を向上させてくれるサービスだと感じました。
かつて「ガイドブック片手に旅行」だったのが、「Googleトラベル片手に旅行」が当たり前になるかもしれない、そんな感想を持ちました。
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ただ余談ですが……情報の取得から予約まであまりに便利であるがゆえ、また今後さらにリコメンデーションが強化されていった場合、旅のひとつの魅力ともいえるセレンディピティを得にくい可能性はあるので、個人的には使いどころかなとも感じていたりします 🙂
今後、このサービスが提供するUXがどのようにアップデートされていくかにも注目したいと思います。