アート鑑賞手当で「国宝」を観てきました

こんにちは。デザイナーの風間です。

私たちの会社には、「アート鑑賞手当」という社内制度が存在します。
それは、「月5000円を上限として、鑑賞後2週間以内にブログを書くことを条件に、スタッフのアート鑑賞(絵・音楽・映画・演劇・ダンス)を補助する」というもの。

入社以来気になっていた制度。発信に慣れておらず、ハードルを感じていましたが、「まずはやってみよう!」と一念発起し、この制度を活用させていただきました。
今回足を運んだのは、話題の映画「国宝」です。

時を忘れる圧倒的な美しさ

普段自主的には映画を観ないため、3時間という上映時間に少し不安を感じながら映画館へ。
でも、そんな心配は一切いらないほど、あっという間で濃い時間を過ごしました。

まず目を奪われたのは黒川想矢さん演じる少年時代の喜久雄の登場シーン。
わっと思わず声をあげそうになったほど美しく、渡辺謙さん演じる半二郎の感情もリアルに想像できました。
喜久雄の芸事にひたむきに向かっていく姿そのものからも目を離せず、作品の世界に深く没入することができました。

豪華で素敵な俳優さんばかり出演されていますが、やはり吉沢亮さんの演技は本当に素敵でした。歌舞伎や屋上のシーンでは、その美しさに何度か涙がこぼれました。
元々造形的に美しいイメージを持ってはいましたが、表情一つ一つからにじみ出る美しさ、儚さ、色気、青年期から壮年期までの演じ分け…喜久雄の美しさとして心を揺さぶられました。
私が演目で一番好きだったのは、「曽根崎心中」です。感情を露わにしつつも声や眼差しになんとも言えない繊細な儚さがある点で好きでした。パンフレットに一年以上稽古されたと書かれていて、歌舞伎への敬意と熱量を感じました。

本作は映像の美しさも特筆すべき点でしょうか。
効果的なカメラワークと音の盛り上がりが相まって、鳥肌が立ちました。
演技そのものへの感動はもちろんですが、演出によって感情を強く揺さぶられた部分も大きかったように思います。

鑑賞後に広がった世界

歌舞伎というものは歴史が大事で、古い慣習も残るもの。
正直国宝を鑑賞しても、あの俳優陣であの演出だから、楽しめたのではないかと思う部分もありました。
しかし、鑑賞後に坂東玉三郎さんのRED Chairの動画を観て、また違った捉え方ができるのかも、きっと事実は小説より奇なりなのだろうな、とも感じました。
真摯な言葉選び、美しい立ち居振る舞いが素敵でした。映画とは外れますがおすすめです。

映画内で気になった点、共感できなかった点もいくつかありました。
レビューを先に読んでしまうと自分の中の感情が書き変わってしまう気がして、じっくりと考えてみる時間をとってから、いろんな人のレビューを拝読。
その結果、小説を映画で描くには時間が足りなかったり、もちろん私にとって共感できない設定や感情もあるだろうと思ったり。はたまた原作を読めばまた解釈が変わりそうだと分かり...ものづくりの一つのバランスを感じました。
何かを作る者として、ただ美しい!と言うだけではなくて、様々な引き出しを持っていたいものです。
今は簡単に人の感想にアクセスできてしまうのですが、その前に自分の中で内省したり、実際に人と分かち合う体験の尊さを改めて感じられたのも、個人的に大きな収穫でした。

あまりにも遠すぎる存在、作品ですが、物事を高めていくこと、追求していくことを頑張っていきたいと、刺激を受けました。
これからも色々な美に触れていきたいなと思っています。

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