アート鑑賞手当でヘニング・シュミートのピアノコンサートに行ってきました

私たちの会社で始まったばかりのアート鑑賞手当。その第一弾として私は先月ヘニング・シュミートのコンサートへ行ってきました。ヘニング・シュミートは旧東ドイツ出身のピアニスト。私はこれまでリリースされた『Wolken(=雲)』『Spazieren(=散 歩)』が大好きで、福岡に来ることがわかると何としても聞きに行きたい!と、夫に子どもたちを預けて一人で行ってきてしまいました。一人で夜のコンサート。もうそれだけで十分贅沢な時間ですが、上質な空気を目一杯吸い込んで、心が大きく膨らむような、豊かなひと時でした。

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断片的な情景が次から次へと浮かんでくる音楽

場所は日本福音ルーテル博多教会。中洲川端の駅から歩いて10分ほど、繁華街の喧騒から少し離れたところに、静かに佇む教会です。中に入ると、ゴシック式の高い天井と決して大きくはないけれど美しいパイプオルガンが目に入ってきます。普通のコンサート会場やライブハウスとは違って、教会は厳かな気持ちになりますね。

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演奏されたのは、新アルバムの「Walzer」を中心とした曲目。スピーカーやヘッドフォンから聞くのではなく生で音に触れると、次第に心は緩み、熱を帯び、自由になっていくような感覚でした。ヘニング・シュミートの音楽に包まれると、なぜか断片的な情景が次から次へと浮かんでくるのです。静かに降る雪の音、遠くの家の窓の灯り、耳元でささやく声、池に映る波紋、曇り空に高く飛ぶ鳥の姿。どこかで見た、どこかで感じた、頭と心に映っているものが、音の流れと共に浮かび上がってきては消えていく。自分に内在している「感じる」部分が、柔らかく膨らんでいくような気がしました。

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耳から入ってくる情報を、丁寧に選ぶことも大事

そして久しぶりのコンサート会場の雰囲気。小さな咳でも響いてしまう、どこか緊張感が漂う空気に包まれ、耳がいつもより研ぎ澄まされていくようでした。あらためて感じたのは、ライブで触れる音というものは、「ピアニッシモがピアニッシモ」ということ。CDで聞くと、小さな弱い音はその繊細さが伝わりにくいのですが、生で聞くと、触れたら壊れてしまうんではないか、というほど小さな雪の結晶のような音がしっかりと伝わってきます。

耳から入ってくる情報というのは、目や口や手からの情報とは違って、すばやく心の深い部分にまでぐんと伝わってくる力があるように思います。普段の生活で、耳に入れるものは、口に入れるものよりも丁寧に選んであげてないような気がします。だからこそ、時々その感覚を大事にしてあげたいなと思いました。

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コンサートが終わった後、笑顔が優しいヘニングさんに魅せられ、私はちゃっかりとサインをいただいてしまいました。そしてピアノ教室の先生をしている姉のクリスマスプレゼントに楽譜を買い、猛ダッシュで夫と子どもたちの元へと走って帰りました。

アート鑑賞手当、次もまた心の栄養を摂りにどこかへ出掛けたいと思います!

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