不確実な時代を生き抜くための経営術、エフェクチュエーション入門<後編>

「不確実な時代を生き抜くためのエフェクチュエーション入門」後編では、エフェクチュエーションの5つの法則について、事例を交えてご紹介していきます。

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エフェクチュエーション 5つの原則


エフェクチュエーションには5つの原則があります。

手中の鳥の原則


1つ目の「手中の鳥の原則」は、自分が既に持っているものから価値を生み出すという考え方です。
例えば、ベビースターラーメンは、インスタントラーメンの "あまり"を利用した「もったいない精神」から生まれた製品です。結果、元のラーメンよりも有名になるどころか、日本で知らない人はいないヒット製品となりました。

成功のための宝物は、どこかに探しへ行かなくても手元に、ゴミとして捨てているものの中にも眠っているかもしれません。市場を発見するのではなく、市場が紡ぎ出されることもあるのです。
「自分が何者であるのか」「何を大切にしていきたいのか」「どんな能力を身につけたいのか」「どんな能力を持った仲間がいて、どう組み合わせられそうか」...まずは見つめ直すことからはじめてみましょう。

許容可能な損失の原則


2つ目の「許容可能な損失の原則」は、何かを始める際、事前に損切りラインを決めましょうというルールです。
終わりを迎える可能性を想像せずに闇雲に突き進めば、それは勇気ある挑戦ではなく、蛮勇と評されるでしょう。失敗が重なって借金が膨らんだり、友人やパートナーとの関係悪化につながります。
実際に起業家や経営者に話を聞いても、始めるより終わらせる方が難しいと仰る方が多く、実行することが難しい考え方です。
この原則でご紹介したい事例は、若者向けアパレルブランドを数多く展開するyutoriの制度、Yリーグ。毎年新しいブランドが生まれている一方で、立ち上げ1年で700万円の売り上げに満たなければブランドを廃止する仕組みがあります。1つの失敗が全ての終わりとならないようなリスク管理は、会社経営にとってとても大切です。

レモネードの原則


3つ目の「レモネードの原則」は、アメリカのことわざ "Make lemonade out of lemon” が由来で、すっぱいレモンも甘くしてレモネードにできる=どんな逆境においても創意工夫すれば、逆手に取ってチャンスに変えられる、という意味です。
代表的な事例としては、ポストイットが挙げられます。粘着力の低い接着剤をなんとか活かせないかと考え、「簡単に剥がしやすい」と弱点を長所に転換したことで誕生。今では世の中に欠かせないベストセラー商品となりました。

クレイジー・クエストの原則


4つ目の「クレイジー・クエストの原則」は、目的に合わせて手段として人を調達するのではなく、キルトのように人を紡ぐという発想です。
事例の一つとしてご紹介するのは、建物全てが氷でできていることで有名なスウェーデンのアイスホテル。今では大人気スポットですが、実は最初から作ろうと思って作られたものではないのです。
創業者は元々ラフティング事業をしており、オフシーズンの冬場の売り上げの落ち込みを改善するため、札幌雪まつりの様な氷のアートフェスティバルを開こうとしました。
しかし、前日の雨でオブジェが崩壊。そんな中でも何かをしたいと、参加型の氷のワークショップに変更した結果、氷で作る家(イグルー)が美しいと大好評となりました。



好評だった氷の家はその日限りとせずに、アートギャラリーとしてオープン。その後、近くの地域の宿泊施設の需要が高まったことで冬場のホテルへと転換し、アイスホテルの原型が誕生しました。
さらに人気が高じてウォッカ会社に声をかけられ、コラボレーションをすることに。大きな会社がバックについて、オールシーズン楽しめる形へ変わり、資金面での問題もなくなったことで、一気に本格的な事業として拡大していきました。
ビジョンを持った起業家が目的に向かって人、もの、金を手段として調達し実現したのではなく、その場その場で最善を尽くして人を巻き込み、結果的にアイスホテルが紡げることとなったのです。

飛行機の中のパイロットの原則


最後の5つ目「飛行機の中のパイロットの原則」は、計画どおりに行うことよりも、不確実性に対応することを重要視しよう、という考え方です。
飛行機のパイロットは飛行計画を順守しながらも、悪天候や危険に対して柔軟に航路を変えたり着陸する権限を持っています。計画を完璧に行うことにこだわりすぎない方が、危険を回避したり、結果として成功を導くことがあるのです。

ここで、一つ言葉を紹介します。

神よ、 変えることのできないものを静穏に受け入れる力を与えてください。
変えるべきものを変える勇気を、
そして、変えられないものと変えるべきものを区別する賢さを与えてください。
ニーバーの祈り

現実=他人や社会を変えることは難しいですよね。経営はうまくいくことばかりではなく、悪天候の時もあります。そんな時でも、自分でコントロールできる部分にフォーカスして柔軟に対応していくことが大切です。
自分の理想と実際の現実の中で、現実を否定する理想主義者ではなく、「現実的な理想主義者」が経営には向いていると言えるのではないでしょうか。



以上、エフェクチュエーションの5つの原則をご紹介いたしました。
前編でお話ししたスターバックスの成功の謎は、エフェクチュエーションに存在したことがお分かりいただけたのではないでしょうか。
コーヒー豆ショップからカフェへ、そしてカフェに職場でも家でもないサードプレースとしての意味付けを行うことで、意味のイノベーションを行ったのです。

まとめ


変化の激しい不確実な時代で、中小企業が生き残っていくためには「ユニークさ」が必要です。
大企業であれば巨大な資本を基に、資本を活かした戦い方ができますが、中小企業やスタートアップはそうはいきません。そんな中でも、エフェクチュエーションという手法を知って、新しい市場を創造することで、生き残っていくことができるのではないでしょうか。

この記事を読んでくださった方が、紹介した理論を活用し、今まで世の中になかったサービスや製品を生み出す一助となりますように。

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