世界最大級のEコマースカンファレンス、Shopify Unite 2022(メルボルン)参加レポート
こんにちは。アートディレクター兼CMOの佐藤です。
去る2022年10月26日〜27日、オーストラリア・メルボルンで開催された、ShopifyによるEコマースのカンファレンス「Shopify Unite」に参加してきました。
Shopify Uniteではこれまで新機能発表が大きな目玉となっていましたが、今年から製品アップデートは年2回オンラインで発表する形となったため(Shopify Editions)、今回は世界3都市で、開発者向けに新機能の深掘りや具体的な実装方法、該当地域のパートナー事例から今後の展望についての考察などがメインに。そしてもちろん、パートナー同士のネットワーキングも行われました。
本記事ではそんなShopify Uniteについて、参加を疑似体験していただけるよう、会場や開催都市の写真を多めに交えながらご紹介したいと思います。
目次
日本からメルボルンヘ
10月24日、成田発の夜の便でメルボルンへ。個人的には、コロナ禍前の2019年に訪れたシンガポール以来の海外渡航となりました。
翌朝、メルボルンへ到着。
海外特有の"空気が違う"感覚に懐かしさを覚えながら、空港でSIMカードを購入して市内に向かいました。
ビルと緑のコントラストが鮮やかな街、メルボルン
Shopifyが今回、トロント、ロンドンと並んでUniteの開催都市として選んだメルボルン。
その第一印象は、高層ビルと緑のコントラストが鮮やかな街、というものでした。
ビルが立ち並んでいるものの、広々として圧迫感がない。市内のいたるところに緑があり、大きな公園も印象的でした。
オーストラリアは、カフェ文化の発達した場所。地元のカフェでは美味しいコーヒーが飲めます。カフェをめぐりながら、翌日のShopify Uniteに思いを馳せます。
市内の移動は徒歩と、無料のトラムで。
街には数え切れないほどのグラフィティ、ストリートアートがありました。
路地裏をのぞくのも楽しい。
歴史ある図書館も壮観でした。
Shopify Unite 参加レポート
そして到着2日目。いよいよShopify Uniteの開催当日。
場所は中心地から車で20分ほどの会場、The Timber Yardで行われました。
Shopify社からは、北米チームおよびAPACエリアのメンバーが。オンラインイベントでよく目にする面々が目の前に。
参加者は、ストア構築を担うエージェンシーと、アプリ開発パートナーがメイン。オーストラリア、シンガポール、インド、日本、台湾などAPACエリアが中心となりつつ、アメリカやトルコから来ている方にも会いました。
Shopify Uniteで発表された内容
それでは、Shopiy Uniteで発表された内容をいくつかご紹介します。
キーノート:パートナーコミュニティの重要性について
キーノートでは、Shopifyのエコシステムにおけるパートナーの重要性についての言及がありました。
チェックアウト画面のカスタマイズ、Checkout Extensibility
これまでセキュリティの兼ね合いからカスタマイズに大きな制約があったチェックアウト画面についての、安全なカスタマイズを実現するCheckout Extensibility。当初はPlus限定ですが、クロスセルのオファーやカスタムバナーの追加、入力項目の追加などが可能になります。
コンバージョンポイント(購入)に近い場所であることからも注目されるこの機能について、より詳細な紹介がありました。
CMS機能の強化、コンテンツプラットフォーム
ShopifyのCMS機能が大幅に強化。メタフィールドのデータを横断的に管理し、利用できるようになります。
これにより、アイデア次第でShopifyのプラットフォームとしての活用がより広がることが期待されています。
当日は参加者向けに、ベータ登録も開始されました。
バックエンドロジックを改造できる、Shopify Functions
Shopifyのバックエンドロジックを、アプリではなくネイティブ機能としてカスタマイズできるFunctions。
当日「ディスカウント」関連機能がローンチされ、今後の予定として「決済方法」「配送」に言及。さらに将来的には様々な内容が追加されるとのことでした。カスタマイズした機能を、ネイティブの管理画面に組み込めるようになります。
こちらは、全プランで利用可能です。
Shopify開発環境の整備
ShopifyアプリのデザインフレームワークであるPolarisがFigmaと連携し、デザインがコードで出力できるようになったり、開発を行うためのコマンドラインツールShopify CLIがExtentions(拡張機能)に対応するなど、Uniteで発表された新機能を採用するアプリ開発が強力にバックアップされるようになっています。
こうした開発環境の整備を進める背景として、世界中のマーチャントのすべてのユースケースをネイティブ機能でカバーすることは不可能であるから、パートナーによる機能開発を支援する重要性が語られていました。
APACエリアで注目されているShopifyアプリのニーズ
APACエリアに顕著なニーズとして以下が挙げられ、こうしたニーズを満たすアプリの可能性が言及されました。
- OMO
- 請求書
- ローカルデリバリー
- 購入オプション(予約購入、トライアル購入など)
ヘッドレスコマースフレームワーク、Hydrogen
Shopifyが提供するヘッドレスコマースフレームワーク、Hydrogenについてのセッションとワークショップがありました。
セッションでは、Hydrogen(ヘッドレスコマース)のメリットとして柔軟性を中心に紹介。
今後のロードマップでは、ストアフロントに関するアプリとの統合など、Hydrogenの構築と活用がより便利になっていくことを示唆していました。
サーバーサイドレンダリング、静的サイトジェネレータや、Liquid構築と比較した場合の違いについても時間をかけて説明がありました。
まとめ
今回のShopify Uniteでは、今後Shopifyが様々な規模、ニーズのマーチャントに対応できるようさらに柔軟性を高め、以前より標榜する「コマースのOS」を目指す姿勢が明確に表れていたと思います。
一方で、カスタマイズできる項目が多くなることに対してはアプリデザインのガイドライン徹底が呼びかけられるなど、プラットフォームとしての一貫性を保とうとする努力も感じられました。
近年大幅に強化されたメタフィールドについては、コンテンツプラットフォームの登場により利便性/拡張性が飛躍的に向上し、やりたいことを実現しやすくなりそうです。バックエンドロジックを改造できるFunctionsもまた然り。
しかしながら、やれることが増える状況において、機能を無計画に実装してしまうと複雑になりすぎてメンテナンスコストが上がる懸念があります。
ブランドやマーチャントのビジネス課題を、きちんと整理、優先順位づけしたうえで機能の選択をすること。
その機能を実現するための最適な方法を、ビジネスと開発の双方に精通したエキスパートが設計し、実装すること。これが大事なポイントになるのではないかと考えています。
カンファレンス全体の雰囲気は、コマースやそれに関わる物づくりが本当に大好きな人たちが集まりポジティブな雰囲気に溢れていました。Shopifyという共通言語があるので、初対面の海外のパートナーともフラットに、建設的に意見交換ができる。
僕自身、APACエリアの国内外パートナーやShopify社の方たちと色々会話させてもらいましたが、今後のShopifyについてますます楽しみになりましたし、Shopifyがますます好きになりました(そういう意味でも、Shopifyのコミュニティを盛り上げる手腕は本当に見事だなと)。
ところで今回、日本からはShip&coのThomas氏が登壇し、日本のShopify事情も紹介されていました。
その中で、弊社の出版しているテーマ開発入門書『Hello Shopify Themes』もUniteのスクリーンにデビュー。
ShopifyをコマースのOSとして活用することで、日本から世界で紹介されるような事例の登場が期待されますね。
Shopifyに携わる一人として、これからも尽力したいと思います!
Photo by Shota Sato