アート鑑賞手当で「ショーン・タンの世界展」に行ってきました

こんにちは。エンジニアの川島です。

私たちの会社には、「アート鑑賞手当」という社内制度が存在します。
それは、「月5000円を上限として、鑑賞後2週間以内にブログを書くことを条件に、スタッフのアート鑑賞(絵・音楽・映画・演劇・ダンス)を補助する」というもの。

入社前から良い制度だなぁと思っていたのですが、なかなかタイミングが合わず、制度を活用できずにいました。
——のですが、この度、入社から丸二年を経てようやく!笑、私もアート鑑賞手当を利用する機会を得ました:)
今回、私が足を運んだのは、「ショーン・タンの世界展 どこでもないどこかへ」です。

ショーン・タンのことを少し

ショーン・タンは、絵本作家・イラストレーター・舞台監督と、様々な領域で活躍している、オーストラリア出身のアーティストです。
今年の春、邦訳としては五年ぶりに、彼の新刊絵本『セミ』(原題:CICADA)が、河出書房新社から出版されました。

もともと私は『アライバル』(同じく河出書房新社、2011年出版)でショーン・タンを知り、他にも彼の本はいくつか読んでいたのですが、実は、最近まで、彼のことを少しだけ忘れていました。
本棚に差したきり、背表紙を日々視界に入れてはいたものの……最後に『アライバル』の表紙を開いたのは二年ほど前だったでしょうか。

だから、『セミ』が出版されるというニュースをTwitterで知ったときも、「へえ、良さそうだなあ、本屋で見かけたら買ってみようかなぁ」くらいの軽い気持ちだったのですが……。
いざ本屋で手に取り、ページをめくってみれば、もはや買う以外の選択肢はありませんでした。
そして、ショーン・タンの世界展へ行かない理由も、もはや思いつかなかったのです笑。

(これ以上書くと、アート鑑賞手当の記事ではなく『セミ』の熱い感想記事になってしまうので、一文に留めます……灰色の中で生々しく色鮮やかなそのセミが、虐げられた長い年月の果てに至る最後の色彩を、もう私は忘れられないでしょう。置き去りにするのは、置き去りにされるのは、本当は…… トゥク トゥク トゥク!)

※翻訳者である岸本佐知子さんによるツイート。関連ツイートがスレッド形式でまとまっています

ショーン・タンの世界展

そんな訳で、ショーン・タンの世界展へ行ってきました:)
東京展の会場は、オフィスがある西荻窪からも程近い、ちひろ美術館・東京です。
(なお、東京展の会期は7月28日で終了しましたが、京都展が9月21日から開催予定です。近郊の方はぜひ!)

展示内容は、ショーン・タンがこれまで手がけた絵本の原画に、習作、スケッチ、映像作品、立体作品と、とても豪華なもの。中でも、彼のアトリエを再現した一角は、いつも人で賑わっていました。
そして二階の展示会場には、最新作『内なる町から来た話』(邦訳仮題)の原画も。この日はデザイナーの友人と一緒に訪れていたのですが、互いに早々と別行動を取り笑、それぞれ惹かれた絵に好きなだけ見入るという贅沢な時間を過ごしました:)

私はこれまで、美術館に足を運んだ際、完成した作品を鑑賞するばかりで、習作やスケッチのような制作過程にはあまり注意を払っていなかったように思います。
ですが、ショーン・タン展では、原画と同じくらい、もしくはそれ以上に、習作やスケッチの展示が心に残りました。
一枚の絵が完成するまでに、何枚も何枚も、一瞥しただけでは違いが分からないようなディティールを詰めながら描き連ねられてゆくスケッチの数々。紙面の端に残された日付の移り変わりを含め、それは、既にひとつの物語のように見えました。

そして、絵本を通して眺めていたときには、ただ圧倒されるばかりだった、ショーン・タンの「どこでもないどこか」を描き出す想像力は、魔法のように生み出されたのではなく、日々のスケッチの積み重ねの果てに現れたものなのだと知り、私はなんだか勇気づけられるような思いがしたのです。

とても素敵な展示でした。
見たことがない、きっとこの世には存在しない、けれど何処か懐かしい、そんな不思議なものが好きな方は、ぜひ書店でショーン・タンの作品に触れてみてください:)