「戦略云々の前に、まずは締切を守ってほしい」— インタビュー【Web担当者が制作会社に求めること】
こんにちは、non-standard worldの佐藤です。
弊社ではよりよいサービスの提供につなげていくため、様々な一般企業のWeb担当者の方にインタビューを行い、サービス向上につとめています。
インタビューでは発言内容だけでなく、インタビュー結果をもとに、より顧客の本音を分析するためのツールである「共感マップ」を作成し、発言の背後にある潜在的ニーズにも着目しています。現場のWeb担当者さんは普段、どのようなことを感じながらWeb制作会社と付き合っているのか。そこにどのような潜在的ニーズがあるのか。インタビューから得られた学びをご紹介します。
Web担当者の方は制作会社と付き合う際の参考に、制作会社の方は仕事の進め方などの参考にしていただき、お互いにとってハッピーな形でプロジェクトを進めるための一助となれば幸いです。
目次
インタビュイー(回答者)プロフィール
- 企業:東証一部上場 BtoC企業(従業員数:数万人規模)/海外展開しておりグループ会社も多数
- 属性:Web担当者歴 10年以上/女性
- 概要:新卒で入社後、Web担当者として制作会社への発注などを担当。現在はグループ会社のWebサイトをチェックする業務を担当している。上層部とグループ会社との板挟みが、最近の悩み。
*忌憚ない意見をお伺いするため、弊社と利害関係がない企業のWeb担当者様へのインタビューになります。
共感マップ
インタビュー結果は、上記のような共感マップのフォーマットで整理しました。
インタビュイーの発言は、発言にともなう感情で色分けしたうえで(赤:ポジティブ/青:ネガティブ/黄:どちらでもない)「SAY」列に記入し、その時考え/感じていたと思われることを「THINK/FEEL」列に記入しています。さらに、その背景にある潜在的ニーズについても考察を行いました。
以下、内容をご紹介します。
Q. Web制作会社に対して不満に感じたことを教えてください。
納期の遅れ
SAY(回答者の発言):
不満に感じたのは、納期を守ってくれなかったことです。新卒採用サイトについて、公開の3日前になって間に合わなそうと言われ、結局、公開が1営業日遅れてしまいました。
THINK/FEEL(その時どう考え and/or 感じていたと思われるか):
提案力云々の前に、納期を守るという基本的なところはちゃんとして欲しい。原稿提出が遅れていたとはいえ、もっと事前に言ってくれればこちらも対応の取りようがあった。どのタイミングで何の変更があると、納期に影響が出るか事前に把握しておきたい。
潜在的ニーズ(そこにどのような潜在的ニーズがあると考えられるか):
納期を守ること、そのためのコミュニケーションをしっかり行うことは大前提ですね。
レギュレーションの無視
SAY(回答者の発言):
不満に感じたのは、デザイン(ロゴの使用規定)についてルールを無視されたことです。
THINK/FEEL:
ルールを伝えているのだからちゃんと守って欲しい。
潜在的ニーズ:
各種レギュレーションの事前確認と遵守も大前提といえます。
Q. Web制作会社の仕事で良いと思ったことを教えてください。
オリエンに対する矛盾点の指摘と提案
SAY(回答者の発言):
良いと思ったのは、オリエンに対して矛盾点を指摘して提案をくれたことです。
THINK/FEEL:
オリエンは前例を踏襲しすぎる嫌いがあるので。以前と同じ内容の提案だと上長から"また同じじゃん"と言われる。
潜在的ニーズ:
オリエンを鵜呑みにしない、適切な指摘と提案についてはやはり求められているようです。
数字の根拠があること
SAY(回答者の発言):
数字の根拠があると強いです。サイト制作にあわせてSEO対策するので、その改善予測値などです。
THINK/FEEL:
経営層の決裁をもらうには、数字の根拠があるとスムーズに進みやすい。
潜在的ニーズ:
提案の裏付けとなる、数字の根拠もやはりポイントになりそうです。
サイトの将来像についてのイメージ共有
SAY(回答者の発言):
サイトの将来像、変遷のイメージが記載されている提案は検討しやすいです。
THINK/FEEL:
サイトが完成した後のところまで、企業側の立場でわかりやすく説明して欲しい。
潜在的ニーズ:
サイトがどのように変化/成長していくか、将来像についてのイメージの共有は歓迎されそうです。
Q. Web制作会社の選び方について教えてください。
金額よりも質を重視
SAY(回答者の発言):
Web制作会社を選ぶ際は、安かろう悪かろうではなく、ちゃんとした会社を選びたいです。金額は質を理由に説得できますが、その逆はできないからです。
THINK/FEEL:
失敗したら担当の責任になるし、最悪のケースで別会社に再依頼となればそのほうが費用かかる。対象となるサイトの制作経験があって、安定したクオリティを出せるところにしたい。
潜在的ニーズ:
単純な安さではなく、納期と品質について信頼できること。そのための実績があることがポイントとなりそうです。
期日内に目的のサイトができるというのが絶対的な質
SAY(回答者の発言):
期日内に目的のサイトができるというのが、まず絶対的な質です。プラスアルファの選択基準として、運用面への配慮があると嬉しいです。
THINK/FEEL:
現場としては、更新のしやすさまで考えられていると安心できる。
潜在的ニーズ:
更新しやすさへの配慮、つまり現場での運用面に関する配慮は歓迎されています。
(参考)制作会社選定のプロセス
SAY(回答者の発言):
最初の検討段階では、Web運用部門へ相談します。相見積もりの段階で、購買部門が入ります。そして、1社に決めて実施稟議を上げるます。1社に決める際は、部長クラスが決めています。担当者の意見が通るかは上次第で、デザインにこだわりがあったり、Webの発注経験があると上の意見が強くなる傾向があります。
Q. Webに関する情報源は何ですか?
雑誌やセミナー参加
SAY(回答者の発言):
Webに関する普段の情報源は、『宣伝会議』、『Web Designing』といった雑誌や、セミナー参加(宣伝会議主催のもの)などです。
THINK/FEEL:
Webを使った能動的な情報収集は、そこまでしていない。わからないことも社内に専門家がいるので、Web検索はあまりしていない。
潜在的ニーズ:
運用契約をしている協力会社など、信頼できる情報源からの情報共有は歓迎されるかもしれません。
Q. これから勉強してみたいことは何ですか?
国内と海外のWebトレンドの違いについて
SAY(回答者の発言):
これから勉強してみたいことは、国内と海外のWebトレンドの差についてです。海外展開しているグループ会社のWebを見る立場として、双方が見やすいサイトを作る必要があるためです。
THINK/FEEL:
自社に関連した業界など、特定の領域に関する海外Web動向を調査するのはなかなか骨が折れる。
潜在的ニーズ:
海外と国内のWebトレンドをわかりやすく解説した情報や、Webサイトのグローバル化について留意すべきことについて情報を求められていました。つまり、企業のビジネス展開に関連した情報は歓迎されそうです。
その他
コンサル利用を止めた理由
SAY(回答者の発言):
コンサルを入れても、自社の事情にあったコメントをくれるところは少なかったので現在は入れていません。
THINK/FEEL:
机上の空論ではなく、現場の課題をきちんとふまえて実践的なアドバイスをしてほしい。
潜在的ニーズ:
現場の課題や制約にも目を向けた、現実的な提案が求められているようです。
Web分析について
SAY(回答者の発言):
最初の段階でのWeb分析は社内でやっています。例えば、"製品ページを見て欲しい"という課題に対して、途中離脱などを見ています。
THINK/FEEL:
より詳細な分析や、見落としていた視点を指摘してもらえると助かる。
潜在的ニーズ:
課題に関連するログ解析、および改善施策の提案が求められています。
Webサイト構築時の社内確認プロセス
SAY(回答者の発言):
デザイン段階での確認は、「縦」は部長クラスまで、「横」は更新に関わる部署、広報、IRなどです。テストアップ段階の確認は、基本的に現場のみです。
THINK/FEEL:
デザイン確認の展開がしやすい資料が欲しい。そこに、判断材料としてデザインの根拠についても書いて欲しい。
潜在的ニーズ:
デザイン確認の展開がしやすい資料フォーマットと、判断材料として根拠の記載が求められています。
まとめ
グローバル展開もしている大企業のWeb担当者様に、貴重なお話を伺うことができました。
大手の広告代理店や制作会社と仕事をしてこられたわけですが、印象的だったのは「納期を守る」、そのために「コミュニケーションを丁寧に取る」といった、基本的な仕事の進め方について不満を感じられていたということでした。
Web制作会社としては、提案力などの付加価値について重視するだけでなく、そういった基本的なことがしっかりとできているか見直す機会が必要かもしれません。
そのうえで専門家として、オリエンの矛盾点を指摘した提案や、数字の根拠を提示することで、成果にコミットする仕事ができればと思います。
インタビューにご協力いただいたWeb担当者様、ありがとうございました!
インタビューにご協力いただけるWeb担当者さまを募集しています【謝礼あり】
弊社ではサービス向上につなげるため、このようなインタビューにご協力いただけるWeb担当者さまを一般募集しております。詳細はこちらをご覧ください。
現場の生の声に耳を傾けることで、よりよいサービスを提供できるWeb制作会社として精進していきたいと思っていますので、ご協力の程よろしくお願いいたします。