【みんなの笑顔をつなぐ、関わり方のデザイン】第2回 関わる人がハッピーになるような、考え方のポイント

<前回の続きです。>

クリエイティブ・ディレクター酒井博基さんから学ぶ、「みんなの笑顔をつなぐ、関わり方のデザイン」。今日は、関わる人がハッピーになるような、ものごとを動かすときに大切になる考え方のポイントを学びます。

1. 関わった人みんなの手柄にする

「自分の手柄にしようとすると、まわりのパフォーマンスが落ちるんです。とりあえずみんなの手柄にしていく。若手スタッフとかにも『どう思う?1から10まで自分でやってみて、いますごい良い風景が立ち上がってるじゃん。これって最高の仕事じゃない?』って聞くことで、自分の成功体験として刷り込む。たとえその人が全部をやっているわけじゃなくてもね(笑)」

バンドで例えると、もともとはボーカルのようにステージの中心に立って自分が一番目立つ存在になりたかったと話す酒井さん。それがトップクリエイターとして一番わかりやすい求心力で、一番おもしろいと思っていたそうです。けれど、次第に全体に集まっているエネルギーを俯瞰して見る方が面白いと感じて、いまはどんどんステージから離れていっているとのこと。

クリエイターとして自分を押し通すのではなく、関わる人たちを俯瞰して眺める。ある意味、自分から手放すことで、人との関わりを冷静に見つめることができたり、スッと人と人との間に入っていくことができたり、より客観的にものごとが良い方向に動く方法が見えたりするのかもしれません。

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2. 自己犠牲は自分にも相手にとってもプラスにならない

この教えは、酒井さんが共同で創業した会社、株式会社リライトのパートナーから教わったとのこと。

「自己犠牲が自分が思っている以上に相手にとってプラスになっていないと気付きをもらいました。デザイン業界では、よく納品してからちょっと修正してほしい、という依頼がくるんだけど、過去の自分ならやっていた。1時間もかからないし、って。

でも結局それが『あれもこれもお願いします』になって、相手は悪いともお得とも感じていない。つまりは、真剣にお互いのことを大切に想い合えるパートナーになってないってことなんですよね。追加作業分のお金が欲しいんじゃなくて、そういう関係性ってお互いの関与を引き出し合えない状況になっちゃうんです。」

自己犠牲をしないようになってからのほうがクライアントとの信頼関係が深まり、ちゃんと仕事がまわるようになったと実感しているそうです。

プロジェクトに関わる人が、自分も含めてみんながハッピーになる方法というのは、いわゆる三方良し、の考え方。それを実現させるためには、相手に思いやりをもつことと自己犠牲はイコールでないと、まずは気づきを得ることが必要なのかもしれません。

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3. 自分だけが得をする関係をつくらない

イベントを開いたり、場所づくりのプロジェクトを進めていく中で、ボランティアの力を借りる機会も多いという酒井さん。その時に大事にしているのは、無償の労働力として使われるだけのボランディアを作らないということ。つまりは、自分だけが得をする関係をつくらないよう心がけているそうです。

「たとえば今度のイベントでは、学生にボランティアをお願いすることになって、その代わりに僕は2回無料で授業をやる。アートマネジメントというテーマで、学生たちはロジックを身に付けてからイベントの手伝いをすることで現場に出て学ぶことができるんです。」

「見えないところでも、してもらったことと、してあげられることをどう釣り合いをとるか、めちゃくちゃ気を遣ってやっている!」と笑いながら説明してくれた酒井さん。例え素晴らしいアイディアやビジョンをもっていて、それについていきたいという人たちがいたとしても、その想いを簡単に利用するのではなく、お互いのメリットを実感できる関係性をつくることで、持続可能なプロジェクトへの道が拓けていくのだと教えてもらいました。

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酒井さんから教えていただいたポイントは、どこか清々しさを感じられるものばかり。人と関わることは、利害がからみ合ったり、価値観がぶつかり合ったりすることを避けられませんが、まるで濁っている水を浄化させてくれるような視点を教えていただいたような気がします。

明日は、人と関わる場面で実践できるような、コミュニケーションにおけるポイントを教えていただきます。明日もどうぞご覧ください!

<続く>

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