ノンデザイナーのためのデザイン入門・第1回「メールを書くこともデザイン?デザインって何だろう」

デザインについて基本的な知識を知っているだけで、デザイナーでなくても日常や仕事に活かすことができる「ノンデザイナーのためのデザイン入門」を今日から3日間でお届けします。第1回は「デザインって何だろう?」。メールを書くこともデザインだと考えたことはありますか?実は、そんなところにもデザインの本質が隠されています。それではスタートです!

デザインとは?アートとは?

まず「デザイン」とは何でしょうか?
「デコレーション」「美しいもの」「問題解決」「治療」「用途にあわせて形をつくるもの」。いろいろな言葉で説明することができるかもしれません。

「アートとデザインの違いとは?」という考えから紐解く方法もあります。これは、様々な考え方がありますが、一つの考え方として、アートは「それを作る動機が自分の中」にあり、デザインは「それを作る動機が自分以外の他者の中」にある、と言うことができます。他者というのは社会という言葉に置き換えることもできます。そして「ただ形をつくるだけではなく、対象について深く分析した上で形に落とし込むことがデザインである」とここでは説明したいと思います。その意味を理解するために、まずはデザインの歴史をみていきましょう。

「design」という言葉の歴史

デザインの語源は「計画を記号に表す」という意味のラテン語のdesignare(デジナーレ)です。デザインという言葉が日本に入ってきた当初、日本語では「意匠」などと訳されていて、その意味が正確に反映されていませんでした。またフランスでは英語をあまり使用しないようにするお国柄のため、当初デザインに代わる言葉が検討されたものの、一語で表すことはできなかったそうです。その結果、英語でいうstylingとconceptにあたる二語で表現したとのこと。そこからもわかるように、単に表面的に見えているモノの形をデザインと呼ぶのではなく、「計画やコンセプトを基に形をつくる」という意味が、もともとのdesignという言葉に含まれています。

産業革命がきっかけで生まれた「デザイン」という考え

デザインとアートの違いは、明確に白黒で分けられるわけではなく、グレーゾーンはあると思いますが、技術的な意味では、デザインはアートのテクニックを使っていると言えそうです。

そもそも、なぜデザインという考え方が生まれたかという歴史を紐解くと、19世紀にイギリスで起きた産業革命まで遡ります。これまで職人が手仕事で行っていたものづくりが、機械に取って代わる大量生産が始まった時代。はじめ機械で作られたものは、設計図がきちんと描かれていなかったため、当時の流行を模倣しただけでクオリティーも低かったといいます。

そんな状況に対し、このままでは世の中に汚いもの、美しくないものが溢れてしまうという危機感を覚えたウィリアム・モリスという人が、最初の設計=デザインが重要だと考えました。彼は機械生産そのものに反対するという点で、時代錯誤の側面もありましたが、彼の生み出したデザインという思想は後々引き継がれていくことになりました。
その当時、いわゆる絵画・彫刻などはpure art(純粋芸術)、デザインはapplied art(応用芸術)と呼ばれていました。その言葉からわかるように、アートのテクニックを応用したもの=デザイン、という考えであったことがわかります。

誰かに何かを伝える時、いつもデザインが行われている

昨今ではデザインのカテゴリーはボーダーレス化していると言われています。ただ今回は便宜上、プロダクトデザインとグラフィックデザインを分けて考えます。この2つの違いとして、プロダクトデザインは立体、グラフィックデザインは平面であると言う人が多いと思うのですが、実は、プロダクトデザインは目的がそれ自体を「使用すること」であるのに対し、グラフィックデザインは目的がそれによって何らかの「情報を伝えること」である、と言えると思うのです。

何らかの情報を伝えることがデザインであるとするなら、どんなことがデザインという言葉に含まれてくるでしょうか。デザインという言葉を広い意味で使うなら「誰かに何かを伝えるとき、いつでもデザインが行われている」と言えそうです。

そうすると、メールを書くのもひとつのデザインと言うことができます。メールの目的は、それによって相手に何らかの情報を伝えること。例えば、思いついたまま文章を羅列して改行なしに書いたら、わかりにくいですよね。見出しに丸印をつけたり、改行を入れたり、普段私たちが自然にやっていること、これも一つのデザインです。

問題はそれに対して、意識をもてるかどうかということ。良いデザイナーはわかりやすいメールを書く、という人もいるくらい「相手にどれだけわかりやすく伝えるか」は、デザインを考える上で一つのポイントとなります。仕事の中でも、暮らしの中でも、私たちは「誰かに何かを伝える」ことを日々繰り返しています。その中で、デザインの知識を活かすことができたら、新しい発見があるかもしれません。次回は、具体的に活用できそうなグラフィックデザインの法則等をご紹介したいと思います!

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