non-standard worldの考えるウェブデザイン 〜 ミニマルデザインの根底にある思考
シリコンバレーで近年注目を集めているという、茶の湯や禅の思想。
あるいは、故スティーブ・ジョブズ氏が若かりし頃より影響を受けたという、禅寺の庭園をはじめとした禅文化。
世界をリードするIT産業最先端の地で、「間 (ま)」や「余白」を重んじ、心の豊かさを求める日本の伝統文化が支持されているのは、興味深い現象ではないでしょうか。
non-standard worldのデザインにおける「間」や「余白」
日本美術の伝統に脈々と流れる、「間」や「余白」の美意識。それは、non-standard worldの手がけるウェブデザインでも重要視している価値観です。
コミュニケーションにおいて、ユーザーに伝えたいことというのは色々と出てくるもの。しかし、ストレートにあれもこれも言いすぎてしまうと、受け手が入り込む余地を奪ってしまう。
だからこそ、あえて語りすぎず、余白を残したデザインを意識するようにしています。ミニマルあるいはシンプルと呼ばれる表現は、そうした発想から結実したものに他ありません。
実はこれ、会話と同じではないでしょうか。こちらが言いたいことを立て板に水のごとくまくし立てたところで、相手の心には届かないはず。
例えば総務省によれば、平成21年の時点ですでに、国内で1日あたりDVD約2.9億枚相当の情報が流通し、そのうちユーザーに認知されるのは1日あたりDVD約1.1万枚とのこと。
ただでさえ消費しきれない情報があふれかえり、人が1日に消費する情報量も増え、さらに、ソーシャルメディアの普及によって消費者発信の口コミが影響力を増す現在、エモーションに届かないインフォメーションでは、ユーザーに伝わらないはずです。
アートとテクノロジーを使って、人の心の柔らかい部分に触れるためのものづくりをする
non-standard worldのフィロソフィーに掲げている、"アートとテクノロジーを使って、人の心の柔らかい部分に触れるためのものづくりをする"。
この言葉の、人の心の柔らかい部分とは、エモーションのこと。
想像力を喚起し、その想像力を受容できる懐の深いものづくりをすることで、受け手のエモーションに働きかけたいという考え方です。
会話上手は聞き上手、という言葉があるように、受け手の想像力や感情に耳を傾け、それを受け止めるスペースを残すことが、ウェブにおけるコミュニケーションでも大切だと考えています。
white pattern - 真っ白な背景に真っ白な模様を想像する
実はこのことは、ものづくりをするうえで、ずいぶん前から考えていたこと。
自分がベーシストとして参加するバンドeuphoriaが2007年にリリースしたアルバム"white pattern"は、真っ白の背景に真っ白の模様(white pattern)を想像しうる、「イマジネーション」をテーマにした作品でした。
真っ白な背景に真っ白な模様が浮かんでいたとしても、普通は誰も気付かない。でもそういうものをもっと感じられる想像力を持ったら、日常がもっと彩り豊かになるはず、というテーマのもと、楽曲はスリーピースの最小限の音数で構成したインストゥルメンタルを中心とし、アートワークもコンセプトを表現するものになっています。
次回は、こういったものづくりの哲学、デザイン観のベースとなっている、伝統的な日本文化の美意識について紹介したいと思います。