
正しい問題を設定し、解決のための糸口を探る〜ノンスタ流デザインスプリントのご紹介
「もしも私が地球を救うために1時間の時間を与えられたのだとしたら、59分を問題の定義に使い、1分を解決策の策定に使うだろう」
アルベルト・アインシュタイン
わたしたちの会社は、お客様の伴走者でありたいと思っています。
そのための取り組みの一環として、新規構築やリニューアルなど大規模なプロジェクトを始める前に、Googleベンチャーズが提唱したデザイン思考に基づいた「デザインスプリント」と呼ばれるワークショップを行い、正しい問題を設定し、解決のための糸口を探っています。
一般的なデザインスプリントのプロセスは以下のようになります。
1. プロジェクトの目的と現在の理解: 目標を明確にし、それに対してどんなことが課題になっているのかを理解します。
2. 発想: その課題をどうやったら解決できるか、さまざまなアイデアを出し合い、最適な解決策を検討します。
3. 決定: 限られた時間と予算を考慮し、実行するアイデアを絞り込み、具体的な計画を立てます。
4. プロトタイプ: 実際にユーザーが体験できるプロトタイプを作成します。
5. テスト: ユーザーにプロトタイプを体験してもらい、フィードバックを収集します。
本来のデザインスプリントは、5日間連続で、意思決定者を含むメンバー全員がリアルな場所で集合して行うものですが、現実的な業務上それは難しいことが多いので、弊社では1と2のプロセスを4時間ずつ2日間で行い、3から5までの工程を時間をかけて行うスタイルでプロジェクトを進めています。
ここではその具体的なやり方、進め方について解説します。
参加メンバー
そのプロジェクトに意思決定者の方には必ず出席いただいた上で、7名以下の中でECに関わる多様なメンバーにご出席いただけるようにご調整いただいています。
デザインスプリント(ワークショップ)開催目的
プロジェクトの実施にあたって、目的と課題、解決策の糸口を掴む
事前準備
- そのプロジェクトにおける一番大きな課題、解決できたらインパクトが大きい問題をワークショップ前に準備する
- 意思決定する人を選んでいただく
注意事項
- 可能な限り2日間連続でワークショップを行う
- なるべく深い思考で対話できるよう、原則としてPC/スマホは使わず、紙と付箋を使います。
- 時間をきっちり管理する
当日弊社でご準備させていただいているもの
- タイムテーブル
- 模造紙、マジック、付箋、シール
- 飲み物
- お菓子
- 時間を管理のためのアラーム
ルール
- 立場や経験によらず対等に話せます、ただし決めるのはリーダーです。
- 語ることは受け止められます。
- 希望、提案、いつでも歓迎。
- 今日の話は、ここだけの話。
ワークショップ内容
1日目
自己紹介 20分(1人3分程度)
- お名前
- お住まいの場所
- このプロジェクトでのご担当
- 好きなこと、興味あること
- ここだけの秘密(アイスブレイクを目的としています)
長期目標についての確認:30分
半年後、1年後にどうなっていたいか?
プロジェクトを通じて実現したいことの確認と言語化
目標を達成する上での課題の確認:30分
1年後、このプロジェクトが失敗に終わってるとしたらどんな理由か?
長期目標を達成するうえで、現状課題になっていること、課題になる可能性があることの洗い出し
ターゲット像及びその行動理解のためのカスタマージャーニーマップを作る:30分
→ ユーザーを含む関係者が製品/サービスを利用する流れを図にする
ターゲットはどんな属性で、ターゲットユーザーがECサイトと出会って購入し、リピートするまでの流れを構造として洗い出し、カスタマージャーニーマップというフォーマットで可視化する
休憩:10分
専門家に聞く:30分
可能であればプロジェクトに関する専門家にヒアリングを行う
難しければメンバーで課題に関するリサーチと共有を行う
どうすればメモの作成、分類、投票:30分
→ 思い浮かんだ課題を 「どうすれば~できるか?」 のフォーマットで付箋に書いたもの作成し、
その中から重要な課題を選ぶ投票では、意思決定者が4票、他のメンバーが2票投票する
ターゲットを決める:30分
→ 最も重要なユーザーが誰で、そのユーザーのどんな瞬間が最も大切かを決める
2日目
GOOD&NEW 15分
アイスブレイクを目的としてメンバーそれぞれが、2週間以内にあった良かったことか新しい発見をひとつ。話した人が次の人を指名する。
先行事例研究 40分
カスタマージャーニーマップで整理された課題をもとに、参考になる先行事例(自社事例も可)を持ち寄って、各自その事例のどんな点が良いと思ったかを共有する
*このワークのみPC,スマホ使用可能
休憩 10分
メモ 20分
20分間で長期目標の書き写しと、これまでのアイデアから役立ちそうな情報を自分用にメモ。
アイデアのラフスケッチ 45分
課題を解決するためののアイデアについてメンバーひとりひとりが考える(匿名)
アイデアについての意見交換会 30分
- 出されたアイデアについての説明と、良いと思ったところに投票
- スケッチを貼りだして、気に入った部分にシールを貼る(無制限)
- 進行役がシールの多い場所をピックアップする
- 作った人が名乗り出て補足説明する
- 長期目標を振り返り、メンバーがベストと思う箇所にシールを貼り、理由を説明する
- 意思決定者が3枚、取り入れたいアイデアにシールをはる
デザインスプリント全体振り返り:30分
やってみてよかったこと、つまずいたこと、次のステップにつなげたいことの順でふりかえりを共有します。
最後に
わたしたちのデザインスプリントに参加される方は未経験の方がほとんどですが、実際にワークショップを開催すると、
「忙しい日常業務の中で、なかなか話せなかったことが、第三者のファシリテーターを交えることで客観的に話すことができた」
「目標としていることをはっきり言語化することができて腹落ちした」
「課題に思っていることが共有できて良かった」
などの効果を実感されています。
わたしたちの仕事は、お客様にとっての主治医のようなものだと考えていますが、解くべき課題をきちんと定義して、解決の糸口までのきっかけを共有すれば、治る力、成長していく力はお客さん自身にあるのだと、最初は緊張していたお客様のチームメンバーの方々が活発に議論し、解決策まで考えていく姿にいつも感動しています。
いつかこの記事を読んでいる方ともデザインスプリントでお会いできることを弊社スタッフ一同、楽しみにしています。
参考文献
『SPRINT 最速仕事術 ―あらゆる仕事がうまくいく最も合理的な方法』 ジェイク・ナップ、ジョン・ゼラツキー、ブレイデン・コウィッツ著、ダイヤモンド社
『デザインスプリント ―プロダクトを成功に導く短期集中実践ガイド』 Richard Banfield、C. Todd Lombardo、Trace Wax著、オライリージャパン