独立して8年間で学んだこと、そして社員に伝えたい10のこと

今年の7月末で、サラリーマンを辞めて独立して8年になります。
独立して良かったかと言えばYESですが、
起業して5年以上生き残る会社は15%というデータが示す通り、
大変さや背負っているリスクを考えると、
人に独立することをおすすめするかと言えば、NOです。
ただこれから、雇われているから安心という社会ではなくなっていくので、
今、うちの会社でも新しい社員を募集中ですが、
今いる社員、新しく社員になる人は小手先のテクニックではなく、もし独立しても大丈夫な仕事の土台となるマインドとスキルを身につけて欲しいと思い、伝えたい10のことを綴ります。

目次

  1. 努力する場所を考えよう
  2. 力を集中させよう、決断しよう、決めたらそれ以外の可能性を断とう
  3. 相手目線で物事を考えよう、相手と向き合うのではなく、同じ方向を向こう
  4. 事実と価値判断を分け、まずはありのままの事実を見つめよう。客観的な根拠を持って意見を主張しよう
  5. まずは型にはまろう
  6. うまくいくことは最初からそれなりにうまくいく。そしてうまく行かなかった時にどこで諦めるのか、最初から決めておこう
  7. 1日に決断できることは限られてる。ルール化できることはルール化していちいち頭を使わずに済むようにしよう
  8. お金は「稼ぐ」スキルだけではなく、「使う」スキルも磨こう
  9. お金に関するルールで一番大事なことは、赤字か黒字よりも、払うと約束したお金を払うと約束した日に払えるかどうか
  10. 1〜9を守った上で、自分が愛を感じることをやろう

1.努力する場所を考えよう

これから独立する人に一番最初に伝えたいことは、努力する「場所」にこだわって欲しいということです。

独立する前、僕は、

仕事の成果 = 努力の質 × 努力の量

と思っていました。
多くの人が通る道である学生、サラリーマンは、教師だったり、上司だったり、どんな問題を解くか(=努力の場所)は誰か別の人に決められてきた人がほとんどなので、この考え方でいいし成果もでます。

しかし独立してからは、

仕事の成果 = 努力する場所 × 努力の質 × 努力の量

になります。
誰かが設定した問題を解くのではなく、自分で設定した問題を自分で解くことになるのです。

戦略の教科書として名高い兵法書の古典である「孫子」にも、
一番最初にまずは戦わないことが最優先、
もしどうしても戦わなければいけないときは、戦う場所を考えようと書かれていますが、
どんな問題を解くか(=努力の場所)を選ぶ力は、
独立してからもっとも重要になるスキルで、ここを間違えると、
どんなに努力の質と量を上げても結果はでない。

そして誰かが設定した問題を解くことが優秀だった人ほど、弱者の戦略がとれずに
競争が激しいところに参入してしまい痛い目にあう傾向があるように感じています。

じゃあどんな場所が選べばいいかと言うと、「ニーズがあるけど、競争が激しくなく人と戦わなくて済む場所」です。
独立してうまくいってる人ほど「人と競争しないですむ場所を見つける」仕事がうまい。
従業員5名以下の会社のことを零細企業と呼びますが、もしあなたが一人で独立したなら、
零細企業以下の力しか持っていないということです。
そのことを認識して、その力しかもっていなくても生きている場所を探しましょう。

2.力を集中させよう、決断しよう、決めたらそれ以外の可能性を絶とう

ダイナマイトは「力が大きい」から爆発したときの力が強いのではなく、
「力を集中させている」から爆発したときの力が強い。
水鉄砲は水の量が多いから威力が強いのではなく、
水が飛び出すときの力を集中させているから威力が強い。

どんなにあなたが優秀でも、あなたが持っているヒト・モノ・カネの力の総量は、
大きな資本主義の中では、激流に浮かぶ笹舟のようなもの。
それでもいい仕事をしたいと思ったら、力を集中させなければいけない。

それが決断力。
そして決断とは「決めて断つ」と書きます。
決断は決めるだけでは不十分で、その選択で行くと決めた後、
その他の可能性は断つことが大事です。

決めたら迷わず徹底的に力を集中させる。

独立した直後は、「なんでもやります」と言いなさいみたいなアドバイスをする人もいますが、僕はそれは悪手だと思う。
むしろ自分ひとりの力ではなんでもできないからこそ、どこに力を集中させるか、選択と集中が大事。

3.相手目線で物事を考えよう、相手と向き合うのではなく、同じ方向を向こう

お題目のように繰り返される「お客さま第一主義」という言葉に、辟易してる方もいるかもしれません。
しかし、ビジネスの基本は相手目線で考えること。

ここで気をつけるのは、あなたが関わることになるお客さんや取引先などの相手の「こと」を考えるのではなく、相手の「立場で」考えることです。

相手には相手の利害、今までの人生で培ってきた価値観があり、
相手のことを考えて言ったつもりの意見でも、
ときには受け入れられないことがあったりと、
自分の努力でどうにもならない場合が多々あります。

しかし、「相手の目に映る自分の姿」は自分の努力で変えることができます。
相手の立場で物事を考えるとは、単純に相手のことを考えるのではなく、
「相手の目に映る自分の姿」が最高のものになるように自分の行動を変えていくことです。

そしてお客さまがあなたにお金を払うということは、
あなたにお金を払って成し得たい目的があるということで、
その目的を想像して達成しましょう。

あなたのお客さんはパトロンではない。
人のお金で自分のしたいことができると考えない方がいいし、
人のお金でやっていることは、その人の目的を叶えましょう。
そういう考えで他人に尽くしている人ほど結果が出ているし、
金銭的な報酬だけが報酬なのではなく、相手の喜ぶ姿というのも報酬です。
人の目的を叶えたときの喜ぶ姿を見ることが、より良い仕事を生みます。

4.事実と事実解釈を分け、まずはありのままの事実を見つめよう。客観的な根拠を持って意見を主張しよう

人間はバイアスや偏見を持った生き物です。
あなたが「朝、おいしい卵焼きを食べた」と言った時、
あなたが「朝、卵焼きを食べた」というのが事実、
あなたが「おいしい」と感じたかどうかは事実に対する解釈ですが、
「おいしい卵焼き食べた」を一つの事実だと考えてしまうのが人間です。

フェイクニュースも陰謀論も怪しい宗教を信じてしまうのも根は同じだと思うのですが、訓練しない限り人は、事実と事実解釈を分けて考えることができず、信じたいことを事実だと思います。

希望的観測に基づく計画、悲観的になりすぎているトラブル対応、お互いの主観のぶつけ合いになってしまう議論などは、すべてそういった何が「事実」で何が「事実解釈」なのかを分けて考えられないから起こります。

正しい判断は正しい現状認識から始まります。
バイアスぬきで事実を観察し、そこから価値判断をする。
そして何が事実かを考えるのに大事なのは数字です。
人に何か意見を言うときもバイアスぬきで事実を観察した結果の数字を元に、意見を言える人は強い。
仕事において客観的根拠に基づかない意見は多くの人を説得することはできません。

5.まずは型にはまろう

「愚者は経験に学ぶ、賢者は歴史に学ぶ」
といいいますが、先人たちが導き出した歴史を越えて残ってきた型には意味があります。
新しいことに挑戦する時に最初から自分のオリジナルの仕事の仕方でやろうとするのではなく、その分野における型を調べてまずは教科書通りやってみるのが結局は成功への近道です。
例えば字。
子どもたちの書き順をまったく自由に書かせたグループと書き順を徹底的に教え込んだグループでは、書き順を徹底的に教え込んだグループの方が字をきれいにかけるようになる実験があります。
まさに『型』があるから『型破り』ができるのであって『型』がなければ『型なし』なのです。

6.うまくいくことは最初からそれなりにうまくいく。そしてうまく行かなかった時にどこで諦めるのか、最初から決めておこう

新しい人と仕事するときでも、新しいプロジェクトでも、うまくいくことは最初からそれなりにうまくいきます。
逆に最初どうしてもうまくいかないことが一発逆転でうまくいくことは極めてまれです。
映画にでてくるようなドラマチックな一発逆転は、現実ではめったに起こらないから映画になるのです。
上手くいかないことを上手くいくまでヒト・モノ・カネを無制限につぎ込んでがむしゃらに頑張るという姿勢で仕事するのではなく、ここまで頑張ってダメだったら竹を割ったようにあきらめ、次の手を考えて別の行動に移る方が、自分や関わる人の精神的、金銭的ダメージが少なく済みます。
結婚よりも離婚の方が難しいように、新しいプロジェクトや事業も始めるよりも撤退する方が難しいので、新しいプロジェクトを始める前に、関わる人にここまで頑張って駄目なら諦めるという撤退ラインを客観的な数字(累積赤字がいくらになったら撤退するなど)で約束した方が良いです。
「最後まであきらめない」というのは物語としては美しいのですが、ヨーロッパの音速飛行機コンコルドの開発などのように「もっと早く諦めていれば甚大な損害が発生しなかったもの」も世の中にたくさんあるし、人はそういった不快な事実を見ようとしないということを頭の片隅においておいてください。

7.1日に決断できることは限られてる。ルール化できることはルール化していちいち頭を使わずに済むようにしよう

社内でも良く、
「すり合わせではなくルール化しよう」
ということを僕はよく言いますが、どんなに優秀な人でも1日に決断できるものごとの量は限られています。
たからこそ、ルール化できることはルール化して、頭を使わなければできない仕事の量を減らし、
大事な決断をするためのリソースを残しておくことが、余裕を生み出し最終的に1日にできる仕事の量を増やします。
たとえて言うなら交通ルールと同じで、今わたしたちは信号があるから相手がどんな考えを持っているかとか気にすることなく車を運転することができますが、
もし信号というルールがなく他の車と空気や話し合いで譲り合いをしながら運転していたらどうでしょうか。
毎日気を使うし、事故は増えるし、精神的にも消耗します。
仕事もそうで、ルールがあることで自分とチームの消耗を防ぐことができます。

8.お金は「稼ぐ」スキルだけではなく、「使う」スキルも磨こう

年収といったお金の稼ぎ方の話はみんな食いつくのに、「お金をどう使うか」の話はみんな気にしないけど、稼いだお金を「正しく使う」というのも重要なスキルです。
世の中完全に一人でできる仕事はないので、自分にできないことを誰かにお金を払ってお願いしなければいけない。
その時に仕事のどの部分を、どんなことを考えて、どんなことをやってる相手にどんなことをお願いするか。
稼いだお金をただ溜め込むのではなく、自分とその周囲にいる人の未来のためにどう使うのか。
経営は借り物競争でもあるので、正しくお金を使える人にお金は集まるし、正しくお金を循環させるのも大事な仕事です。

9.お金に関するルールで一番大事なことは、赤字か黒字よりも、払うと約束したお金を払うと約束した日に払えるかどうか

独立するとお金という存在がより一層生々しい力を持ったものとして感じると思います。
事業にとってお金は車にとってのガソリンで、それが目的ではないけど、それがないと目的地にたどり着けないもので、かつ取扱いを間違えると重大な事故につながります。

そしてお金に関する一番大事なルールは、黒字か赤字かよりも、
「払うと約束したお金を払うと約束した日に払う」
です。
言葉にするとシンプルですが、これだけを考えていれば、どれくらいの赤字が許容できるのか、いつの時点でどれくらい事業が成長していないといけないのかなど経営で見なければいけない指標がわかります。

赤字でも払うと約束したお金を約束した日にお金が払えていれば、倒産しないし、
例え黒字でも払うと約束したお金が払うことができなければ倒産することがある。

特に独立して最初の方は全然稼げていないことに焦るかもしれませんが、
たとえば家計でも、たとえ毎月の家計が、赤字になったとしてもスキルアップのために貯金を切り崩して資格の学校に通ったりする判断はありだし、
たとえ半年後に大きなボーナスが入ることがわかっていても、今月の家賃が払えなければ家を追い出させることがあるのと同じです。

キャッシュフローと聞くと難しく感じるかもしれないけど、赤字であれ、黒字であれ、「払うと約束したお金を払うと約束した日に払う」というルールが守れていれば、ものすごい痛い目にあうことはないと思う。

また、それ以外の値付けをはじめとした、仕事にまつわるお金についての考え方には、色々な考え方があると思う。
最初から黒字にして堅実にやっていくという考えもあれば、最初大きな赤字を出してでも将来大きな利益を取りに行く考えもあるし、
値段を低くして成功する人もいれば、値段を高くして成功する人もいる。
お金の動きにその人の考え方があらわれると言いますが、自分なりの経営哲学ができてくれば、お金の考え方もついてくると思います。

10.1〜9を守った上で、自分が愛を感じることをやろう

愛さえあればうまくいくとは思わないけど、最後はその仕事に対する愛みたいなものが勝負を分けます。

「合理性の上に愛を」

上に述べた1〜9で自分の土台を作った上で、自分が愛を感じることを世のため人のために思いっきりやれば、きっとそこに道は開ける。

これらの話は裏を返せば、僕がそういう失敗をしてきたという経験から言っています。
これらを自らの戒めとし、どうか僕と同じ失敗をしなよう、社員、独立したばかりの、これから独立する友人たちに捧げます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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