
健やかに成長するECサイトのための数値分析体制(CPO・LTV・ROAS)を整える方法
目次
はじめに:ECサイトのビジネス構造
ECサイトで売上を立てるためには費用をかけて集客する必要があります。
WEB広告などを使い、1万人に広告を見てもらって7人に購入してもらうようなイメージです。
そしてそうやって苦労して一人のお客さんに買い物をしてもらっても、1回の購入してもらうだけでは集客にかかった費用を回収できません。
そのため一度購入してもらうだけでなく、お客様と長期的な関係性を築き、何度も購入してもらうことでビジネスを成立させることが重要です。
式で表すと、
お客様にオンラインショップでお買い物してもらうまでにかかった費用 < 一年間でお客様に買い物してもらった粗利の合計
が成り立ち、3倍以上になると無理のない成長が可能になると言われています。
健やかに成長するECサイトを作るために、どんな数字を見るべきか
そのために、分析体制を整えて数字を把握することが大切です。
特に見るべき指標は以下になります。
お客様にオンラインショップでお買い物してもらうまでにかかった費用:CPO
CPO(Cost Per Order)はお客様にオンラインショップでお買い物してもらうまでにかかった費用です。
マーケティング費用 ÷ 注文数
例えば、マーケティング費用が100万円で100件の注文があった場合、CPOは1万円です。
商材によってもCPOの目安は違い、例えば、アパレルの直販ECサイトのCPOは通常、以下の範囲に収まることが多いです。
- 新規顧客獲得の場合:3,000円〜8,000円
- リピート顧客の場合:500円〜2,000円
マーケティングチャネル別では、以下の傾向があります。
- Googleリスティング広告:比較的CPOが高い(4,000円〜10,000円)
- SNS広告:ターゲティング精度によるが中程度(3,000円〜7,000円)
- リターゲティング(一度サイト訪問済)広告:比較的低い(1,000円〜3,000円)
- メールマーケティング:非常に低い(数百円程度)
商品単価とも関係があり、一般的な目安として、商品平均単価の15%〜25%がCPOの適正範囲とされています。
- 例:平均単価が10,000円の場合、CPOは1,500円〜2,500円が理想的
「ここまでかけてよい」広告費の上限、上限CPOの算出
上記に加えて、わたしたちの会社では北の達人さんの「売上最小化、利益最大化の法則――利益率29%経営の秘密」をベースに「ここまでかけてよい」広告費の上限、上限CPOの算出も行っています。
宣伝販促費はかければかけるほど売上は伸びていきますが、どこかの地点で「宣伝費をかけたほど売上が伸びない」という費用対効果が悪くなるポイントに当たります。それを上限CPOをと呼び、後述のLTVとの比較で算出しています。
一年間でお客様に買い物してもらった粗利の合計:LTV
LTV(ライフタイムバリュー)は、一年間で一人のお客様に買い物してもらった粗利の合計です。
売上で計算することが一般的ですが、私たちの会社ではより正確な経営の状況の把握のため、粗利ベースでの計算が可能な場合はそちらで計算することをおすすめしています。
LTVの計算方法
LTV = 粗利ベースの平均注文金額 × 1年間の平均購入回数
なぜLTVを見ることが大切なのか。
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顧客獲得コスト(CPO)とのバランス評価
- 顧客獲得に5,000円かけても、その顧客のLTVが15,000円であれば投資は回収できます。
- 一般的に「LTV:CPO = 3:1」以上が理想的とされています。
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マーケティング予算の最適配分
- どの広告チャネルや顧客セグメントに投資すべきかの判断材料になります
- LTVの高い顧客層を特定し、そこに予算を集中できます
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リピート購入戦略の策定
- 初回購入後の顧客行動を分析し、リピート率向上施策を検討できます
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商品開発・品揃えの最適化
- 高LTV顧客の購入傾向から、商品ラインナップを強化できます
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顧客維持施策の効果測定
- メールマーケティング、ロイヤルティプログラム、アフターサービスなどの効果を判断できます
LTV向上のための一般的なEC施策
- パーソナライズされたレコメンデーション
- リピート購入割引やポイントプログラム
- 定期購入オプションの提供
- アフターサービスの充実
- メールマーケティングの最適化
- 顧客体験の向上(使いやすさ、配送、返品ポリシーなど)
時系列LTV,商品別LTVの算出
LTVに関しても北の達人さんの「売上最小化、利益最大化の法則――利益率29%経営の秘密」をベースに以下の数字を算出しています。
時系列LTV
- 顧客の購買行動は時間とともに変化するので、初回購入から一定期間後のリピート率や購入金額の変化を把握し、どういった顧客に何をアプローチすれば良いかの施策の検討に役立てています。
商品別LTV
- 商品ごとにLTVを算出することで、どの商品が長期的に高い収益をもたらすかを明確に把握できます。
広告の費用対効果を見るROAS
ROASは「Return On Ad Spend(広告費用対効果)」の略称で、マーケティングや広告キャンペーンの効率性を測定する重要な指標です。
ROASは以下の式で計算されます: ROAS = 広告からの収益 ÷ 広告費用
例えば、10万円の広告費用で50万円の売上が得られた場合、ROASは5(または500%)となります。
ROASを見る主な理由:
- 広告投資の効果測定:どの広告チャネルや広告キャンペーンが最も効果的か把握できます
- 予算配分の最適化:高いROASを示す広告に予算を集中させることができます
- キャンペーンの改善:どの要素が成功しているかを理解し、戦略を調整できます
- 投資対効果の確認:全体的なマーケティング戦略が利益を生み出しているかの判断材料になります
一般的に、ROASが1(または100%)以上であれば、少なくとも広告費用を回収できていることを意味します。
業界や目標によって理想的なROAS値は異なりますが、多くの場合、4以上が良好とされています。
Shopifyで上記の数字を見るための方法
1. UTMパラメータの整備
UTMパラメーターは、ウェブサイトへのトラフィックの追跡や分析を可能にするURLのタグ付けの仕組みです。
これによりCPOやLTV、ROASを正しく計測できます。
一般的なUTMパラメーターには以下の5種類があります:
- utm_source: トラフィックの発生源(Facebook、Twitter、ニュースレターなど)
- utm_medium: マーケティング媒体(有料広告、SNS、メールなど)
- utm_campaign: 特定のキャンペーン名
- utm_term: 有料検索キーワード
- utm_content: 同じキャンペーン内で異なる広告やリンクを区別するためのパラメーター
例えば、次のようなURLがあります: https://example.com/?utm_source=twitter&utm_medium=social&utm_campaign=spring_sale
このURLから、訪問者はTwitter(utm_source)のソーシャルメディア投稿(utm_medium)から来ており、「spring_sale」キャンペーン(utm_campaign)の一部であることがわかります。
Google Analyticsなどの分析ツールを使用すると、これらのパラメーターに基づいてトラフィックデータを整理・分析できます。
どのSNSや広告が効果があるか、その効果を測定することができます。
弊社ではこのような表を作って管理しています。
Shopifyではコンバージョン(購入や登録など)があった際に、UTMパラメーターを記録する機能があります。
Shopifyのアナリティクス機能は、訪問者がサイトに到達したときのUTMパラメーター(utm_source、utm_medium、utm_campaign、utm_term、utm_contentなど)を自動的に追跡し、その後のコンバージョンと関連付けて保存します。
これにより、以下のことが可能になります:
- どのマーケティングキャンペーンが最も効果的か確認できる
- どの広告チャネルからの訪問者が最も購入する可能性が高いか分析できる
- マーケティング投資対効果(ROI)の計算ができる
Shopify管理画面の「アナリティクス」または「レポート」セクションで、これらのUTMデータを確認できます。また、GoogleアナリティクスやFacebookピクセルなど、外部のトラッキングツールとShopifyを連携させることで、より詳細な分析も可能です。
2. LTV/CACを分析するツールをインストールする
弊社では自社開発のツールでShopifyのCAC/LTVを分析しています。

自社開発のアプリで、LTVをチェックして改善に役立てています。
自社開発した理由は、売上ベースではなく粗利ベースでLTVをチェックすることで、より正確な分析をしたかったからです。
他社様のツールでは、UIがわかりやすく動作も高速なECPowerというShopifyアプリがおすすめです。
最後に:お客さんの気持ちは、数字に必ず現れる
ECビジネスを成り立たせるためには、がむしゃらに努力しているだけではダメで、数字のどこかに現れるお客様の気持ちを捉えて施策を打つことが大事です。
上記のような指標をしっかりと分析し、お客様の声に耳を傾けることで、より良いECサイト運営ができるでしょう。
non-standard worldでは、WebマーケティングからWeb制作、Webアプリ構築までを一気通貫してサポートすることが可能です。
ご関心のある方は、こちらより、ぜひお問い合わせください。