ノンスタの読書トーク|『ゲド戦記』『誠実な詐欺師』『銃・病原菌・鉄』

こんにちは。エンジニアの川島です。

私たちノンスタのメンバーには本好きが多く、社内チャットツールのSlack雑談チャンネルには、しょっちゅう誰かのお勧め本トークが流れてきます。
とはいえメンバーの趣味嗜好が基本的に被っていないため(笑)、紹介される本の内容は実にさまざまです。実用的なビジネス書・技術書はもちろん、話題の人文書、純文学、漫画、二百年前の海外文学まで——本トークはどんどん積み上がり、「これ、社内だけに留めてたら勿体無いね」という声が、やがて誰からともなく上がりはじめました。

という訳で。
ノンスタメンバーが読んでいる本のことを、細やかながら、皆さまにもお裾分けします:)
良い本に出会う一助となりますように。

初手は私、小説書きエンジニア川島のお勧め本です。
過去、Slackに流したものの中から、選り抜きでご紹介します。

アーシュラ・K・ル=グウィン『ゲド戦記』

ファンタジーなんて子供っぽい……とお思いの方もいらっしゃるでしょうか。いやいやそんなことはないぞ、と本書を片手に熱く申し上げます。
文化人類学者の娘であるル=グウィンによって書かれたゲド戦記シリーズは、異国、遠きひとびとが営む生活を、敬意を持って想像するという姿勢に貫かれています。
そして、どこにもない世界を書くということは、現実の世界を離れた視座から、「ひと」が持つであろう普遍性を名指す行為です(それが成功するか失敗するかはともかく)。ゲド戦記の舞台、アースシーを旅することは、私たちの世界を旅することと本質的には変わらないのだと思います。
前置きはさておき、純粋に物語としてメチャクチャ面白いので、お勧めです。

書影

トーベ・ヤンソン『誠実な詐欺師』

ヤンソンはムーミンシリーズの著者という面ばかりが取り上げられがちですが、他の小説にも優れたものが沢山あります:)
こちらは、北方の寒村を舞台に、誰も疑わないお人好しの老女アンナと、鮮烈なまでに誠実な若い女性カトリの交流を書いた作品です。数字と計算に長けたカトリはあらゆる嘘とお世辞と搾取を看破し、アンナが信じていた周囲の好意という嘘、そしてアンナ自身の善良さをも突き崩してしまいます。けれど、カトリもまた、アンナを前にして無傷ではいられません。
暗闇に閉ざされる長い冬、凍てつく空気、作中を貫くヒリヒリとした緊張感……。ムーミンシリーズとは全く異なる語り口に驚かされますが、よくよく見てみると、ヤンソンお馴染みの皮肉っぽさと優しさを併せ持つ眼差しが浮かび上がってきます。登場人物の造形センスも択一です。
最後まで明確な答えは示されない、「誠実とは何か」という問いかけが結晶化したような一冊です。

書影

ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』

『サピエンス全史』が面白かったという方へ、次の1冊としてお勧めしたい本です。人類史本のド定番にして傑作、文庫化もされていて大抵の書店では手に入ります。
なぜ、現代の人間社会は、このような形に成ったのか——ヤリというニューギニア人から投げかけられた問いかけに、著者ジャレド・ダイアモンドは膨大なページを費やして返答を試みます。狩猟採集の時代から現在までの1万3000年を縦横に行き来しながら、地理・地学・語学・史学・人類学の知見を駆使して謎に挑んでゆく様は、スリリングなサスペンス小説のようです。
原書初版は1997年のため、一部古い言及もありますが、世界史や人類史の理解を深めるにはぴったりだと思います。書評・要約としては、「松岡正剛の千夜千冊」の言及がとても読みやすいです。その他、批評や批判も併せてぜひ。

書影

会社のブログで、業務と関わりのない本について書くのは、何とも不思議な心地がしますね……笑。
ただ、ノンスタの働き方の理想として、「暮らしがあってこそ仕事が輝く」というワークライフハーモニーが掲げられていることを思えば、案外自然なことなのかもしれません。
教養やリベラルアーツと呼ばれるもの——読み、考えることによって、生まれ育った環境の向こうへと自分の世界を広げてゆく力——それは、はっきりと見える形でなくとも、日々の仕事において専門知識と両輪を成しているのだと思います。